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詐欺罪(刑246条)とは?わかりやすく解説! 

Last Updated on 2021年8月3日





 

 詐欺罪は、窃盗罪や強盗罪と同じく財産犯の1つです。 

 

詐欺罪は、意思(瑕疵はあるが)に基づいて財物の占有が移転している点に特徴があります。窃盗罪や強盗罪は、被害者の意思に反して財物の占有を奪う犯罪なのですが、詐欺罪は、一応は自らの意思で財物を他人の占有に移しているのです。 

 

 欺罔行為により財産を得ることを1項詐欺、不法の利益を得ることを2項詐欺といいます。  

 

・刑法246条1項 「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。 

・同条2項 「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」 

・刑法251条 「第242条、第244条及び第245条の規定は、この章の罪について準用する。 

 

 財物とは、他人が占有する他人の財物を言います。詐欺罪にも刑法242条が適用されますので、他人が占有する自己の財物を、欺罔行為を手段として取り返した場合も、詐欺罪が成立する可能性があります。 

 

・刑法242条 「自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。」 

 

*財物については窃盗罪の記事で解説しています 

*242条の解説はこちら 

*2項詐欺の財産上の利益については強盗罪の記事で解説しています 

 

 以下では、1項詐欺罪を念頭に説明します。 

 

詐欺罪が成立するには、①欺罔行為→②相手方の錯誤→③錯誤に基づく交付行為④占有移転が必要です。 

 

 欺罔行為とは、交付行為の判断の基礎となる重要な事項について偽ることをいいます。 

 

*欺罔行為についての判例はこちら 

 

例① Xは、コンビニで買い物をした際、店員に「お釣りが足りない」と嘘をついて、余分にお釣りをもらった。  

 

 Xはお釣りを全額受け取ったにも関わらず、これを偽っているため、欺罔行為を行っています。そして、錯誤に陥った店員から余分に金銭を受け取っているため、詐欺罪が成立します。  

 

例② Xは、コンビニで買い物をした際、店員が余分にお釣りを渡そうとしてきたのに気が付いたが、金に困っていたので丁度いいと思いこれを受け取り、そのまま家に帰った。 

 

 欺罔行為は、作為に限られず不作為によっても可能です(もっとも、不作為による詐欺罪が認められるには、Xに作為義務=真実を告げる義務が肯定される必要があります)。この例でXは、作為による欺罔行為は行っていません。しかし、Xはお釣りが余分であることを知りつつこれを店員に告げずに、お釣りを受け取っています。Xの作為義務を認める場合には、Xに不作為による詐欺罪が成立することになります。 

 

*作為義務についての解説はこちら 

 

例③ Xは、コンビニで買い物をした際、店員から余分にお釣りをもらったが、家に帰ってこれに気が付いた。 

 

例②では、Xが、お釣りが余分にあることに気づいた時点で、未だお釣りの占有が店側にあります。そのため、詐欺罪が成立するかが問題となりました。それでは例③はどうでしょう。 

 

詐欺罪が成立するには、欺罔行為に基づき、財物の占有が他人に移転しなければなりません。しかし例③では、Xが余分なお釣りの存在に気が付いた時には、お釣りの占有は完全にXに移転しています。そうすると、例③では、詐欺罪は成立しません(占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立しうるにとどまります)。  

 

・刑法254条 「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。  

 

例④ Xは、窃取したキャッシュカードでATMからお金を引き出した。 

 

 まず、Xによるキャッシュカードの窃取は窃盗罪に該当します。それでは、Xが盗んだクレジットカードで現金を引き出す行為には何罪が成立するでしょうか。 

 

 キャッシュカードは被害者名義なので、Xが被害者自身であると偽って現金を引き出す行為は欺罔行為に当たると考える方もいるでしょう。しかし、欺罔行為は人に向けられる必要があると解されていますので、この例では詐欺罪は成立しません(この場合、引き出した現金について、窃盗罪が成立します。)。

 

例⑤ Xは、Yに「あっちに何かいる!」と気をそらし、その隙に財布を奪った。  

 

詐欺罪が成立するには、被欺罔者が交付行為を行う必要があります。この場合、交付行為はありませんので詐欺罪は成立せず、窃盗罪が成立します。 

 

もっともこの場合、交付行為を問題するまでもなく、詐欺罪は成立しません。なぜなら、Xの行為は、Yを錯誤に陥らせて交付行為をさせる現実的危険性がある行為ではないからです。 

 

*実行行為についての解説はこちら 

*未遂犯の解説はこちら 

 

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