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未遂犯(刑43条)とは?わかりやすく解説! 

Last Updated on 2021年6月12日





 人が犯罪行為を行っても、結果が発生しない場合があります。もし刑法が既遂犯しか処罰しないとの立場であったら、法益保護としては不十分です。そのため、刑法は一定の犯罪について、未遂犯を処罰することとしています。 

 

 未遂犯は、犯罪の実行に着手したが、これを遂げなかった場合に成立します(刑法43条)。また、未遂は未遂犯処罰規定がある場合に処罰されます(刑法44条)。 

 

・刑法43条 「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」 

・刑法44条 「未遂を罰する場合は、各本条で定める。」 

例① XはYを殺そうとしてYをナイフで刺したが、Yは重傷を負うにとどまった。 

 

 未遂犯が処罰されるのは、法益侵害という結果発生の危険を惹起させたためです。そうすると、実行の着手が認められるのは、結果発生の危険性が具体的に発生した時点という事になります。 

 

 例でXが行った行為は、Yの死という結果を発生させる危険のある行為です。そのため殺人罪の実行に着手しているといえます。しかし、殺人罪の結果である人(Y)の死は発生していません。そのため、例①でXは殺人既遂罪とはならず、殺人未遂罪が成立するに留まることになります。 

 

例② XはYを殺そうとしてYをナイフで腹部を刺した。Yは致命傷を負い、あと2時間で死亡する状態であったが、直後に現れたZがYの頭に向けてけん銃を発射し射殺した。 

 

 この場合、Zに殺人罪が成立します。他方、Xは殺人未遂罪にとどまります。たしかに、Yは殺人罪の実行に着手しており、結果的に人(Y)の死という結果は発生しています。しかし、Xの実行行為と結果との間に刑法上の因果関係が欠けます。そのため、この場合にはXが実行に着手したが、これを遂げなかった(実行行為と結果に因果関係がない)ことになり、殺人未遂となります。このように、結果が発生しなかった場合だけでなく、因果関係が欠ける場合にも未遂犯が成立することがあります。 

 

*実行行為と因果関係の解説はこちら 

 

例③ Xは同居するYを殺そうとして毒薬を購入して家に置いていた。すると、Yは勝手にこれを飲んで死んでしまった。 

 

 Xの行為に殺人未遂罪は成立しません。なぜならXは殺人罪の予備行為をしたにとどまり、未だ実行に着手していないからです。この場合、Xには殺人予備罪、過失致死罪が成立する可能性があります。 

 

 未遂犯の刑は、既遂犯の刑を減軽したものとなります。もっとも、「減刑することができる」ということですから、事実関係の如何によっては、減刑せずに既遂犯の法定刑で処罰することも可能です。 

 

*未遂犯についての判例はこちら 

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