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行為無価値論と結果無価値論とは?わかりやすく解説!

Last Updated on 2023年1月30日

行為無価値論と結果無価値論とは?わかりやすく解説!

 

 刑法を学ぶ上で、行為無価値論、結果無価値論の理解は避けて通れません。とっつきにくいと感じる用語ですが、実際はなんてことはない刑法上の概念の1つです。以下で解説します。

1.行為無価値とは?

 

 行為無価値とは、極端に言えば、ある人の行為がけしからんがゆえに、その者を処罰するという考え方です。例えば、AがBを殺したとします。この場合、Aは警察に逮捕され、最終的に刑罰が科される可能性があります。

 

 ここで、なぜAが処罰されるかということを、もっと厳密に考えてみます。

 

 行為無価値論を徹底すると、Aは、Bを殺すという行為(例えば、Bをナイフで刺す行為)をしたから、処罰されたということになります。この場合、Bが死亡したということは、処罰の根拠とはなりません。あくまでも、このような、社会通念上、許されない行為をしたことのみが、処罰の根拠となっています。そのため、Bを刺す行為をした以上、Bが死亡していようと生きていようと、なんならナイフが刺さっていなくても、処罰されうることとなります。

 

2.結果無価値とは?

 

 他方で、結果無価値とは、極端に言えば、ある人の行為がある結果をもたらしたがゆえに、その者を処罰するという考え方です。

 

 上の例でいうと、Aが処罰されるのは、AがBを刺したからではなく、Aの何らかの行為の結果、Bが死亡したためです。この場合、Aの行為がどのようなものであったか、Aの行為の動機がどのようなものであったかは関係ありません。あくまでも、Bの死亡という結果を生じさせたことだけが、処罰の根拠となっているのです。

 

3.両理論が説かれる実際の問題及び最高裁の立場

 

 何度も言うように、上の話は、行為無価値及び結果無価値をわかりやすくするために、シンプルかつ極端な考え方を前提にしたものです。

 

 実際には、行為無価値と結果無価値は、どちらを重視するかといった点で対立するにすぎず、極端に片方に寄った考え方はあまり主張されません。特に行為無価値については、刑法が、人の死など、結果の発生を構成要件要素にしている以上、行為無価値一本で処罰するというのは、とりえない解釈です。

 

 行為無価値及び結果無価値が触れられることが多いのは、違法性阻却、それも被害者の同意がある場面です。

 

 例えば、AがBの同意を得て、Bに傷害を負わせたとします。上の例でAの行為の違法性が阻却されるのは、どのような場合かを検討するに際して、両理論は対立します。

 

 行為無価値を重視すれば、Aが行為をするに至った動機等諸般の事情を踏まえ、被害者の同意が違法性を阻却するか判断します。そのため、動機が保険金を得るためなど、不当なものであれば、違法性が阻却されることはありません。この点最高裁は、行為無価値を重視して、違法性を判断していると言われます。

 

*被害者の同意について判断した判例はこちら

 

 他方で、結果無価値を重視すれば、被害者が自らの法益を放棄している以上、その動機等他の事情に関係なく、違法性が阻却されるとします(錯誤があるなどした場合は別ですが、その点は無視します。)。

 

 以上をまとめると、以下のようになります。

 

  • 行為無価値は、行為がけしからんから処罰する。
  • 結果無価値は、結果を発生させたから処罰する。
  • 実際は、上記のような極端な考え方はとられておらず、両者のうち、どちらを重視するかで考え方が対立している。

 

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