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実行行為と因果関係とは?わかりやすく解説! 

 

 ある人行為に犯罪が成立するか否かを判断する際にまず検討しなければならないのは構成要件該当性です。構成要件とは、簡単に言えば、犯罪が成立するための枠組みを言います。例えば殺人罪なら、殺」ことが構成要件要素となっています。そして殺人罪の構成要件該当するか客体が人かその者が殺したと言えるか、といった感じで判断していくことになります。 

 

構成要件該当性を判断する際に最も重要なのは①その行為が犯罪の定める実行行為にあたるか②結果が発生したか③実行行為と結果に因果関係があるかです 

 

1.実行行為と結果 

 

例① Aは、日頃からムカついていたBを殺そうと、呪いの儀式行った。すると、Bは交通事故に遭って死亡した。 

 

 実行行為とは、結果発生の現実的危険性を有する行為を言います。ここでいう結果とは、犯罪となる結果を指し、殺人罪でいうなら人の死、傷害罪でいうなら傷害といったように、犯罪ごとに定められます 

 

構成要件該当性は、基本的に実行行為の認定から行います。それでは、本件のように、違法な目的をもって儀式をする行為は実行行為に該当するでしょうか?この場合、因果関係を検討するまでもなく、Aの殺人罪(刑199条)の成立は否定されます。なぜなら、ゲームの世界ならまだしも、現実の世界において呪いの儀式死の結果を引き起こす現実的危険性ないからですそのため、たとえ呪いの儀式を行った日に対象者が死亡したとしても、殺人罪の実行行為と評価されないのです 

 

・刑法199条 「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。 

 

*殺人罪の説明はこちら 

 

例② Aは、Bを殺そうと考えBにナイフを突き刺した。しかし、Bは怪我をしたにとどまった 

 

この場合、Aの行為は人死に至らしめる現実的危険性を有するものです。そのため、殺人罪の実行行為性が認められます。しかし、Bは死亡していません。つまり、人の死亡という殺人罪の結果は発生していません。そのため、この場合も、因果関係を検討するまでもなく殺人罪は成立しません。 

 

以上から分かるように、因果関係を判断するためには、具体的な実行行為と結果をまずは認定する必要があります。両者が認定されない以上、因果関係があるかを考えるまでもなく、その犯罪は成立しません。 

 

 注意が必要なのは、これらの判断は構成要件ごとに判断しなければならないということです。上記例では、殺人罪の実行行為性あるいは結果の発生が否定されていますしかし、②に関しては殺人未遂罪の構成要件に該当するので、Aに殺人未遂罪が成立する可能性があります(未遂罪の成立には②結果③因果関係は求められず、①実行行為が行われたかが主に問題となります 

 

・刑法43条 「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。 

・刑法44条 「未遂を罰する場合は、各本条で定める。 

・刑法203 「199条及び前条の罪の未遂は、罰する。 

 




2.因果関係 

 

 Aは、日頃からムカついていたBを殺そうと考え、Bを家に招待した。そして毒入りのジュース(飲めば即死する)を用意してBにこれを飲ま。しかし、なぜかB全く効かなかった。Bはジュースの味に腹が立ち、怒って帰ってしまったすると、帰り道にBは崖から落ちて死亡した。 

 

この場合、Aが行った毒入りジュースを飲ますという行為は、殺人罪の実行行為に該当します。そして、Bは死亡しているので、殺人罪の結果も発生しています。 

 

それでは、本件において実行行為と結果に因果関係があるでしょうか 

 

判例によると、因果関係は、条件関係を前提に実行行為の危険性が結果へと現実化したか否かを基準に判断されます。 

 

 条件関係とは、実行行為と結果の事実的なつながりを指します。これは、「あれなければこれなし」といった関係がある場合に肯定されます要は、その行為がなければ結果は発生していなかったかを判断するのです。本件では、AがジュースをBに飲ませなければ、Bは怒って帰宅することはなく、崖から落ちて死亡することはなかったと言えます。そのため、Aの実行行為とBの死亡に条件関係が認められます(なお、実際の事案で、条件関係が認められないケースはほとんどないでしょう) 

 

それでは、Aの実行行為の危険性が結果へと現実化したと言えるでしょうか?この判断は、実行行為時に存在した事情やその後の事情も全て判断材料として行います。本件では、即死するほどのれたジュースBに飲まています。その結果、Bが毒により即死た、もしくは数分~数時間後に毒により死亡した場合には、Aの実行行為の危険性がBの死という結果へ現実化したと言えるでしょう。 

 

しかし、本件でBが死亡した原因は、崖から落ちたためです。これは、毒入りのジュースを飲ませた行為の有する危険性が結果へと結びついたわけではありません。そのため、Aの実行行為と結果の因果関係が否定され、Aには殺人既遂罪は成立せず、殺人未遂罪の成立にとどまります(なお、不能犯の問題があります)。 

 

 上記例で、Bは毒のせいで体の自由が利かなくなり、その結果崖から落ちて死亡した。 

 

それでは、上記例でBは即死しなかったが毒はじわじわ効いており崖から落ちた原因が毒で自由が利かなかったことにあったとしたらどうなるでしょうか。 

 

 まず条件関係についてですが、ジュースにより腹を立てたことをとらえても、毒により体の自由が利かなくなったことをとらえても、Bの死との間に事実上のつながりはあります。 

 

 次に、実行行為の危険が現実化したと言えるかですが、例③との大きな違いは、毒がBに効いていたという点です。Bは毒により即死したわけではなく、直接の原因は崖から落ちたことによります。しかし、Aは、Bが即死するほどの量の毒をジュースに入れこれを飲ませたのですから、その行為は、被害者が毒により即死しなくとも、身体に様々な悪影響を与える非常に危険なものです。そして、Aが入れた毒によりBは身体の自由を奪われ、崖から落ちて死亡しています。そのため、Aの実行行為の危険性が、Bの死亡という結果に現実化したと評価できます。したがって、因果関係は肯定され、殺人罪が成立する可能性があります(なお、Aの計画と異なる点は因果関係の錯誤として論じられます)。 

大阪南港事件についての説明はこちら

 

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