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不動産侵奪罪(刑法235条の2)とは?わかりやすく解説! 

Last Updated on 2022年6月24日

 

 他人の物を盗んだ場合には窃盗罪(刑法235条)が成立します。これは周知の事実ですが、それでは、他人の不動産を盗んだ場合には何罪が成立するでしょうか? 

 

 その答えは、タイトルにある通り、不動産侵奪罪です。同罪は1960年に新設されたのですが、このことにより、窃盗罪の「財物」に不動産が含まれないことが明らかになりました。 

 

・刑法235条の2 「他人の不動産を侵奪した者は、10年以下の懲役に処する。」

 

*窃盗罪の解説はこちら 

 

 もちろん、物と違って、不動産(土地、建物)を手で奪い取ることはできないので、同罪の実行行為は窃盗罪とは異なります。 

 

 侵奪とは、「不法領得の意思をもって,不動産に対する他人の占有を排除し,これを自己又は第三者の占有に移すこと」をいいます(*最決昭和12年12月15日①)。そして、侵奪があったか否かは「具体的事案に応じて,不動産の種類,占有侵害の方法,態様,占有期間の長短,原状回復の難易,占有排除及び占有設定の意思の強弱,相手方に与えた損害の有無などを総合的に判断し,社会通念に従って決定すべき」とされています。 

 

 このように、侵奪というためには、不動産に対する占有を排除して自己の占有に移すことが必要です。そのため、虚偽の登記申請をして登記名義を不正取得しても同罪は成立しません。 

 

無断転貸により土地を占有し、その状態で建物を建築した場合でも、直ちに侵奪にあたるとはされておらず、その他の様々な事情を考慮して侵奪の有無を判断する手法がとられています(*最判平成12年12月15日②)。 

 

また、例えば賃貸借契約に基づき土地を占有し、その後同契約が解除された後、続けて占有を継続しただけでは、同罪は成立しません。この場合も、占有を継続しただけでは、他人の占有を排除したことにはならないためです。もっとも、土地に新たな建造物を建てたり、大量の廃棄物を堆積させたりした場合には、占有を侵奪したとして同罪が成立する可能性があります(*最決平成11年12月9日)。 

 

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