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【判例解説】不動産侵奪罪の成否②(各論):最決平成11年12月9日

Last Updated on 2022年6月23日

 

  

Point 
1.不動産侵奪罪の成否 

 

1.事案の概要 

 

 Aは、宅地1496平方メートル(以下「本件土地」という。)を地上の作業所兼倉庫等の建物5棟とともに所有していました。平成8年2月28日、債権者Bの要求により、Bに本件土地及び地上建物の管理を委ねましたが、Bが取得した権利は、地上建物の賃借権及びこれに付随する本件土地の利用権を超えるものではありませんでした。 

 

Bは、同月下旬、上記権利をCに譲り渡しました。そのころAは、代表者が家族ともども行方をくらましたので、事実上廃業状態となりました。建築解体業を営む被告人は、同年3月5日、Cから右の権利を買受け本件土地の引渡しを受け、これを廃棄物の集積場にしようと考えました。そして、そのころから同月30日ころまでの間に、従業員である他の被告人とともに、本件土地上に建設廃材や廃プラスチック類等の混合物からなる廃棄物約8606・677立方メートルを高さ約13・12メートルに堆積させ、容易に原状回復をすることができないようにしました。 

 

 

(関連条文) 

・刑法235条の2 「他人の不動産を侵奪した者は、10年以下の懲役に処する。」 

 

【争点】 

・被告人の行為は、不動産の「侵奪」にあたるか 

 

 

2.判旨と解説 

 

*不動産侵奪罪の解説についてはこちら 

*侵奪の意義について判示した判例についてはこちら 

 

侵奪とは、不法領得の意思をもって,不動産に対する他人の占有を排除し,これを自己又は第三者の占有に移すことをいいます。 

 

 そこで、同罪が成立するためには、不動産に対する占有が存在する必要があります。 

 

 本件土地はAが所有していますが、Aは事実上廃業状態となっています、しかし、土地に対する占有は、登記があることで肯定されうると考えられています。そのため、なおもAは本件土地を占有しているといえます。 

 

侵奪の有無の判断に際しては、不動産の種類,占有侵害の方法,態様,占有期間の長短,原状回復の難易,占有排除及び占有設定の意思の強弱,相手方に与えた損害の有無などを考慮します。 

 

被告人は本件土地の利用権はありますが、地上に大量の廃棄物を堆積させる権限はなく、被告人の行為により原状回復を困難な状態にしています。そのため最高裁は、被告人の行為は侵奪に該当するとしました。 

 

*不動産侵奪罪の成否について判断したその他の判例はこちら 

 

 「以上のような事実関係の下においては、本件土地の所有者であるAは、代表者が行方をくらまして事実上廃業状態となり、本件土地を現実に支配管理することが困難な状態になったけれども、本件土地に対する占有を喪失していたとはいえず、また、被告人らは、本件土地についての一定の利用権を有するとはいえ、その利用権限を超えて地上に大量の廃棄物を堆積させ、容易に原状回復をすることができないようにして本件土地の利用価値を喪失させたというべきである。そうすると、被告人らは、Aの占有を排除して自己の支配下に移したものということができるから、被告人両名につき不動産侵奪罪の成立を認めた原判決の判断は、相当である。」 

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