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訴因変更の可否とは?わかりやすく解説!

Last Updated on 2022年7月5日

 

公訴を提起して公判手続が進行していくと、検察官及び裁判官が、訴因に記載した事実と異なった事実があったのでは?との心証を抱くことがあります。このような場合、検察官は訴因変更(変更、追加、撤回)を請求することがあります(刑事訴訟法312条)。 

 

*公訴の提起についての解説はこちら 

*公判期日の流れについての解説はこちら 

 

・刑事訴訟法312条1項 「裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。」 

 

 訴因変更は、公訴事実の同一性を害しない限度で認められます(刑訴法312条1項)。そこで、公訴事実の同一性がある場合とはどのような場合をいうのかが問題になります。 

 

*公訴事実と訴因についての解説はこちら 

 

 公訴事実の同一性があるか否かは、①公訴事実の単一性があるか否か②狭義の意味で公訴事実の同一性があるか否かを基準に判断されます。 

 

 公訴事実の単一性とは、訴因変更前の訴因と訴因変更後の訴因が、実体法上一罪の関係にあるかを問うものです。ここでいう一罪には、観念的競合や牽連犯も含まれます。他方で、併合罪の関係にある場合は実体法上一罪とは言えないので、公訴事実の単一性が否定されます。 

 

 例えば、住居侵入後に窃盗を行った場合、両罪は牽連犯の関係にあります。そのため、当初の訴因が住居侵入罪の場合、訴因変更手続きを取ることで、窃盗罪の訴因を追加することができます。他方で、窃盗幇助罪の訴因で起訴した場合に、盗品等有償譲受罪の訴因を追加することはできません(*最判昭和33年2月21日)。窃盗幇助したものが、その財物を有償で譲り受けた場合には、盗品等有償譲受罪が成立し、両罪は併合罪になると解されているためです(最判昭和24年7月30日)。 

 

 このように、訴因変更前後の犯罪が実体法上一罪の関係にある場合には、それだけで公訴事実の同一性が肯定されます。 

 

 狭義の意味での公訴事実の同一性とは、訴因変更前の訴因と訴因変更後の訴因が実体法上一罪の関係にあるわけではないが、両事実が同一の事件といえるかを問うものです。狭義の意味での公訴事実の同一性があるかについては、訴因変更前後で基本的事実関係の同一性があるか否かを基準に判断されます(判例)。考慮要素として、犯罪日時・場所、時間的近接性、客体と被害者の同一性などが挙げられます。 

 

また、その判断の際には、訴因変更前の犯罪と、訴因変更後の犯罪が両立するか否かが補助的に考慮されます。すなわち、訴因変更前後の犯罪が両立関係にあるのなら公訴事実の同一性が否定され、非両立関係にあるのなら公訴事実の同一性が肯定されます。 

 

 狭義の意味での公訴事実の同一性の判断は、具体的事案を前提に行われるので、これを理解するには判例を見る必要があります。 

 

*公訴事実の同一性について判断した判例はこちら①、②、③、④ 

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