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【判例解説】無権代理人の責任と表見代理(民法総則):最判昭和62年7月7日 

 

Point 
  1. 無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由 
  2. 無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることはできない 

 

(関連条文)  

・民法109条1項 「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。 

・民法110条 「前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。  

・民法117条 「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。 

 

1.判旨と解説 

 

*代理の解説はこちら 

*表見代理の解説はこちら 

*無権代理人の責任の解説はこちら 

 

 無権代理が行われた場合、相手方は無権代理人に責任を追及することができます。また、代理権限がない者が代理行為を行った場合で、表見代理が成立するときは、相手方は本人に責任を追及することができます。 

 

 問題は、無権代理人の責任と表見代理による本人の責任ともに成立する場合です。双方ともに請求できるとすると、相手方は二重の利得を得ることとなるので、これは許されません。この場合、相手方は表見代理しか主張できない、無権代理人の責任追及しかできない、あるいは、相手方は好きなほうを請求することができるとの考え方がありえます。 

 

 最高裁は、表見代理と無権代理人の責任は独立した制度で、相手方はどちらの主張をしてもよいとしました。そして、相手方の主張に対し本人あるいは無権代理人は、表見代理(無権代理人の責任)が成立するとして、自己の責任を免れることはできないとしました。 

 

表見代理の成立が認められ、代理行為の法律効果が本人に及ぶことが裁判上確定された場合には、無権代理人の責任を認める余地がないことは明らかであるが、無権代理人の責任をもって表見代理が成立しない場合における補充的な責任すなわち表見代理によっては保護を受けることのできない相手方を救済するための制度であると解すべき根拠はなく、右両者は、互いに独立した制度であると解するのが相当である。したがって、無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し同法一一七条の責任を問うことができるものと解するのが相当である(最高裁昭和三一年(オ)第六二九号同三三年六月一七日第三小法廷判決・民集一二巻一〇号一五三二頁参照)。そして、表見代理は本来相手方保護のための制度であるから、無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがって、右の場合、無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。そうすると、無権代理人の責任は表見代理が成立しない場合の補充的な責任であるとの見解に立って、民法一一七条二項の「過失」を悪意に近いほどの重大な過失に限られるものと解し、本件においては右の重大な過失が認められないとして、上告人の前示抗弁を排斥した原審の判断には、同法一一七条の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、右違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。 

 

 

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