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無権代理人の責任とは?わかりやすく解説! 

Last Updated on 2022年11月7日

 

 ある者が他人の代理人として契約を締結する場合、その前提として、代理人に代理権があるのが通常です。しかし、場合によっては、その者に代理権がなかったり、代理行為が代理権の範囲を超えたりした結果、結cんだ契約の効力が本人に及ばないことがあります。 

 

*代理の解説はこちら 

*代理権の濫用の解説はこちら 

*表見代理の解説はこちら 

 

 このように、他人の代理人として契約を結んだが、その効力が本人に及ばないとされる場合には、代理人は損害賠償等の責任を負います(民法117条)。 

 

・民法117条1項 「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。」 

・2項 「前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。」 

1号 「他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。」 

2号 「他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。」 

3号 「他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。」

 

 代理人として契約した者は、自己の代理権を証明するか、本人に追認から追認を得たときを除き、責任を負います。代理人の過失は要件となっていないので、無権代理を行った者は、無権代理につき無過失であってもその責任を負います。 

 

 自己の代理権を証明した場合には、その者が行った代理行為は有効ですので、同条による責任は生じません。また、代理権がないのに代理行為を行った場合でも、これを本人が追認すれば、有効な代理行為があったこととなります。そのため、この場合も、同条の責任を負いません(113条1項)。 

 

・民法113条1項 「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 

・民法116条 「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

また、これ以外の場合でも、➀相手方が代理人に代理権がないことを知っていたとき➁相手方が代理人に代理権がないことを過失により知らなかったとき(但書きに注意)➂代理人が制限行為能力者であるときには、無権代理人の責任は生じません。 

 

 117条の責任は相手方の保護のためなので、保護に値しないとされる①➁の場合には、代理人に対する責任追及を認める必要はありません。また、➂の場合は代理人を保護する必要があるので、この場合もまた責任を追及することはできません。 

 

 他人の代理人として契約した者は、相手方の選択に従い、履行または損害賠償責任を負います。履行とは、代理行為により結んだ契約における本人の義務の履行を指します。 

 

 履行は、代理人にその履行が可能な場合にのみ認められます。例えば、XがAの甲土地を、代理権がないのにYに売った場合、YはXに履行を求めることはできません。甲土地はAに所有権があるので、無権代人であるXがこれをYに明渡したりすることはできないためです。 

 

 ただ、Xが、何らかの理由により甲土地の所有権を取得した場合には、Yは履行の請求が可能です(*最判昭和41年4月26日)。 

 

 なお、相手方は無権代理人の責任と表見代理が成立する場合、どちらを請求してもよいことになっています(*最判昭和62年7月7日 

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