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表見代理とは?わかりやすく解説! 

Last Updated on 2022年11月7日

 

 XがAに代理権を与え、Aが代理人として、権限の範囲内でYと契約を結んだ場合、契約の効力はXY間で生じます。この仕組みを代理といいます(民法99条1項) 

 

・99条1項 「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。 

 

*代理の解説はこちら 

 

 このように、代理人として契約を締結する場合、本人(X)から代理人に代理権が付与されているのが通常です。しかし、代理権がないのに代理人として契約を結んだり、代理権の範囲を超えて代理行為を行ったりするケースがあります。 

 

 代理権がないものが代理行為を行った場合に、相手方を保護する必要があります。この相手方を保護する制度を表見代理といいます 

 

表見代理は、109条、110条、112条に定めがあります。表見代理の根底にあるのは、本人に何らかの帰責性があり、相手方の代理権に対する信頼が正当なものであるなら、相手方を保護すべきとする考えです。この記事では、109条と110条の表見代理について説明します。 

 

1.109条の表見代理 

 

 109条の表見代理は、他人に代理権を与えた旨を表示した場合に問題となります。 

 

・民法109条1項 「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。」 

 

 この表見代理が成立するには、➀本人が第三者に対して、ある者に代理権を与えた旨を表示し②表示された代理権の範囲内で代理行為を行ったことが必要です。 

 

 例えば、XがYに、「Aに甲土地の売却について一任した」と述べたが、実際は、XはAに甲土地売却の権限を付与していなかったとします。その後AがXの代理人として、Yとの間で甲土地売買契約を締結したとします。 

  

 代理が成立するには、Aに代理権が必要ですが、上の例ではAに代理権はありません。そのため、99条1項による代理は成立しませんしかしXは、相手方Yに対して、Aに甲土地売却の権限を付与した旨を告げています。これが代理権授与の表示に当たる場合、109条1項が成立する余地があります。 

 

 代理権を与えた旨を表示する方法には制限がありませんので、書面でなく口頭による表示も可能です。 

 

 表見代理(後述する110条の場合も含む)がよく問題となるのは、白紙委任状が交付されたケースです。白紙委任状とは、委任状において委任事項や受任者の欄などの記載を欠く委任状をいいます白紙委任状には委任事項等の記載がないので、これを受任者が濫用などした結果、代理権の範囲を超えて代理行為がされることがあります。 

 

 判例には、白紙委任状を交付された者が、これを第三者に交付し、その第三者が代理行為を行ったケースで、109条1項の表見代理を肯定したもの(*最判昭和39年5月23日)と否定したもの(*最判昭和42年11月10日)があります。このように、109条1項などの表見代理は、個別の事例ごとにその成否を判断する必要があります。 

 

 同条の要件が充足されると、本人はその責任を負います。ようは、代理が成立したとして、代理人が結んだ契約について効力が生じるということです。そのため、本人は相手方に、代理人が結んだ契約に基づく権利を行使でき、またその契約から生じる義務を負います。 

 

 なお、無権代理行為があった場合、表見代理と無権代理人の責任はともに成立する可能性があります。この場合、相手方は、表見代理の主張をせずに無権代理人の責任を追及することができるとされています(*最判昭和62年7月7日 

 

2.110条の表見代理 

 

 110条の表見代理は、他人に代理権を与えたが、代理人がその代理権の範囲を超えて代理行為を行った場合に問題となります。 

 

・民法110条 「前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

 

 例えば、XがAに、甲土地に、Yとの間で抵当権を設定する権限を与えたのに、Aが甲土地をYに売却してしまったとします。Aにあるのは甲土地に抵当権を設定する権限です。しかし実際に行った代理行為は、甲土地を売却するというもので、与えられた代理権の範囲を超えています。 

 

 110条が成立するためには、何らかの代理権が必要です。判例は、事実行為の代理権があるだけでは、同条を適用できないとしています(*最判昭和35年2月19日 

 

次に、相手方が代理人の権限を信じるにつき正当な理由があることが必要です。判例の中には以下のように判示したものがあります。 

 

・実印を代理人に交付している場合、代理人に実際行った取引をする権限があったものと信じるのが当然で、そう信じることについて過失があったものということは、特別の事情がない限りできない(*最判昭和35年10月18日 

 

・代理人から代理権の有無について話を聞いただけでは足りない(*最判昭和44年6月24日。本人に対して、代理人の代理権について容易に確かめることができた事例 

 

 同条の要件が充足されると、109条1項が成立した場合と同じように、本人はその責任を負います。 

 

*無権代理人の責任についての解説はこちら 

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