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【判例解説】白紙委任状と民法109条1項の代理権授与表示①(民法総則):最判昭和39年5月23日 

  

Point 
1.本人から登記書類の交付を受けた者がさらにこれを第三者に交付し、その者が代理人として契約を締結した場合、常に民法109条1項の要件を充足することとはならない 

 

1.事案の概要 

 

Xは、Aからの12万円の借入に際し、本件土地及び本件建物に抵当権を設定することとしました。その登記手続きのために、同土地建物の権利証、X名義の白紙委任状、印鑑証明書をAに交付しました。 

 

しかしAは、これらをBに交付してしまいました。そしてBは、Xの代理人として、Yとの間で、極度額100万円とする根抵当権設定契約及び停止条件付代物弁済契約を締結しました。 

 

なおXは、この契約を締結することについて、また、Bが上記の書類を使用することについて承諾していませんでした。 

 

 

(関連条文) 

・民法99条1項 「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。 

・民法109条1項 「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。 

 

 

2.判旨と解説 

 

 本件でBは、Xの代理人として根抵当権設定契約等をYと結んでいます。しかし、Bには何ら代理権はありませんでした。 

 

*代理の解説はこちら 

 

 もっとも、XはAに、白紙委任状等を付与しており、これがBにわたっています。そこで、Xから、Aを通してBに対し、代理権授与の表示があったのではないかとして、現行法でいう民法109条1項の表見代理が成立しないかが問題となりました。 

 

*表見代理の解説はこちら 

 

 最高裁は、白紙委任状を付与したからといっても、これは第三者に交付され転々流通することを予定するものではないとします。そのため、白紙委任状の交付を受けた者がこれを濫用した場合や、白紙委任状を誰が行使してもよいという趣旨で交付した場合などを除き、受任者以外の第三者に対して代理権授与の表示があったとは必ずしも言えないとしました。 

 

*似たようなケースで表見代理の成立を認めた判例はこちら 

 

不動産所有者がその所有不動産の所有権移転,抵当権設定等の登記手続に必要な権利証、白紙委任状、印鑑証明書を特定人に交付した場合においても、右の者が右書類を利用し、自ら不動産所有者の代理人として任意の第三者とその不動産処分に関する契約を締結したときと異り、本件の場合のように、右登記書類の交付を受けた者がさらにこれを第三者に交付し、その第三者において右登記書類を利用し、不動産所有者の代理人として他の第三者と不動産処分に関する契約を締結したときに、必ずしも民法一〇九条の所論要件事実が具備するとはいえない。けだし、不動産登記手続に要する前記の書類は、これを交付した者よりさらに第三者に交付され、転輾流通することを常態とするものではないから、不動産所有者は、前記の書類を直接交付を受けた者において濫用した場合や、とくに前記の書類を何人において行使しても差し支えない趣旨で交付した場合は格別、右書類中の委任状の受任者名義が白地であるからといつて当然にその者よりさらに交付を受けた第三者がこれを濫用した場合にまで民法一〇九条に該当するものとして、濫用者による契約の効果を甘受しなければならないものではないからである。 

 

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