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【判例解説】民法110条の正当な理由①(民法総則):最判昭和35年10月18日 

 

Point 
1.本人が他人に対し自己の実印を交付し、これを使用して或る行為をなすべき権限を与えた場合に、その他人が代理人として権限外の行為をしたとき、取引の相手方である第三者は、特別の事情のない限り、実印を託された代理人にその取引をする代理権があつたものと信ずるのは当然であり、かく信ずるについて過失があつたものということはできない 

 

(関連条文) 

・110条 「前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。 

1.判旨と解説 

 

*代理の解説はこちら 

*表見代理の解説はこちら 

 

 民法110条の表見代理が成立するには、相手方が、代理人の権限があると信じるべき正当な理由が必要です。この正当な理由とは、善意無過失と同義と解されています。 

 

 この正当な理由の有無については、個別の事例ごとの判断が必要となります。 

  

 本件で最高裁は、本人が代理人に実印を付与して、代理人が権限外の行為を行った場合、その行為をする権限があったものと信じるのが当然であるとします。 

 

そしてこのような場合、相手方は常に本人の意思を確かめなければならない、とすることはできないとします。そう解さないと、相手方は、代理人と契約を締結する場合、常に本人の意思を確認する必要があることとなってしまい、110条を定めた意味がなくなってしまう(適用されるケースが皆無になる)ためです。 

 

*本条の正当な理由について判示したほかの判例はこちら 

 

 「本人が他人に対し自己の実印を交付し、これを使用して或る行為をなすべき権限を与えた場合に、その他人が代理人として権限外の行為をしたとき、取引の相手方である第三者は、特別の事情のない限り、実印を託された代理人にその取引をする代理権があつたものと信ずるのは当然であり、かく信ずるについて過失があつたものということはできない。そして、かかる場合に右の第三者は、常に必ず本人の意思を確め、行為者の代理権の有無を明らかにしなければならないものと即断することもできない。しかるに原判決は、上告人において、被上告人らは斎藤岩松が上告人から一五万円を借り受けるにつき連帯保証人となることを承諾し、岩松に保証契約を締結する代理権を与えた上、四〇万円の借受についてもその保証書には被上告人らの実印が押されている以上、上告人は右岩松に被上告人らを代理して右四〇万円の借受契約について上告人との間に連帯保証契約を締結する権限ありと信ずべき正当な事由があつたと主張したのに対して、被上告人らが岩松に実印を交付して一五万円の貸借につき保証契約締結の代理権を与えたかどうか、岩松が右実印を使用して四〇万円の貸借につき被上告人らを代理して保証契約を締結したとしても上告人において岩松に代理権があつたと信ずべき正当の事由がなかつたと認められるべき特別の事情があつたかどうかの点について、首肯するに足りる説明をしないまま、上告人の本訴請求を排斥したことは、審理不尽による理由不備の違法があるものといわなければならない。 

 

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