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【判例解説】不動産侵奪罪の成否①(各論):最判平成12年12月15日②

Last Updated on 2022年6月23日

 

 

Point 
1.不動産侵奪罪の成否 

 

1.事案の概要 

 

株式会社Aは、平成4年12月ころ,その所有する宅地12615平方メートル(本件土地)を、転貸を禁止し、かつ、直ちに撤去可能な屋台営業だけを認めるとの約定で、Bに無償で貸し渡しました。 

 

Bは、本件土地上に、L字型の仮設の店舗を構築しました(その後、これをく形にするため増築。以下、「本件施設」という。)。Bは、本件施設で飲食業を営んでいましたが、平成6年6月ころ、Cに対し、本件土地の転貸や直ちに撤去できる屋台以外の営業が禁止されていることを伝えて賃貸し、本件土地及び本件施設を引き渡しました。 

 

Cも本件施設で飲食業を営んでいましたが、同年11月ころ、被告人に対し、本件土地を転貸や直ぐ撤去できる屋台以外の営業が禁止されていることを伝えて賃貸して本件土地及び本件施設を引渡しました。 

 

被告人は11月下旬ころから同年121日ころにかけて、風俗営業のための店舗(以下「本件建物」という。)を作りました。本件建物は、本件施設の骨組みを利用して作られたものでしたが、同施設に比べて、撤去の困難さは格段に増加していました。 

 

(関連条文) 

・刑法235条の2 「他人の不動産を侵奪した者は、10年以下の懲役に処する。」 

 

【争点】 

・被告人の行為は「侵奪」にあたるか 

 

 

2.判旨と解説 

 

*不動産侵奪罪についての解説はこちら 

*侵奪の意義について判示した判例についてはこちら 

 

侵奪とは、不法領得の意思をもって,不動産に対する他人の占有を排除し,これを自己又は第三者の占有に移すことをいいます。 

 

そしてその判断に際しては、不動産の種類,占有侵害の方法,態様,占有期間の長短,原状回復の難易,占有排除及び占有設定の意思の強弱,相手方に与えた損害の有無などを考慮することになります。よって、本件のように転貸が禁止されているのに転貸をした、違法な増改築をしただけでは、直ちに侵奪にあたるわけではありません。 

 

 本件では、Bがした改築は適法なものなので、その改築後の状態を前提にして、被告人が行った改築が侵奪にあたるかが問題にされています。そして、被告人が構築した本件建物は 

本格的な建物で、解体等の困難さも格段に増加したものであるとします。そのため、被告人の本件建物の建築はAの本件土地に対する占有を新たに排除するもので、侵奪にあたるとしました。 

 

*不動産侵奪罪の成否について判断したその他の判例はこちら 

 

「以上によれば,Bが本件土地上に構築した本件施設は,増築前のものは,Aとの使用貸借契約の約旨に従ったものであることが明らかであり,また,増築後のものは,当初のものに比べて堅固さが増しているとはいうものの,増築の範囲が小規模なものである上,鉄パイプの骨組みをビニールシートで覆うというその基本構造には変化がなかった。ところが、被告人が構築した本件建物は,本件施設の骨組みを利用したものではあるが,内壁,床面,天井を有し,シャワーや便器を設置した八個の個室からなる本格的店舗であり,本件施設とは大いに構造が異なる上,同施設に比べて解体・撤去の困難さも格段に増加していたというのであるから,被告人は,本件建物の構築により,所有者であるAの本件土地に対する占有を新たに排除したものというべきである。したがって,被告人の行為について不動産侵奪罪が成立するとした原判断は,正当である。」 

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