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殺人罪(刑法199条)とは?わかりやすく解説! 

Last Updated on 2020年10月16日

 

 刑法が定める犯罪行為のうち、殺人罪を知らないという方はいないと思います。しかし、殺人罪の内容を詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。 

 

1.殺人罪とは 

 

例① AはBを殺意をもってナイフで刺し、殺害した。

 

 殺人罪(刑199条)は人を殺した場合に成立します。この例でAは、殺意をもってBを殺しているので殺人罪が成立します。 

 

なお、殺人罪には、未遂、予備の処罰規定が存在します(刑201、203条)。 

 

・刑法199条 : 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。 

・刑法201条 : 199条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。  

刑法203条 : 199条及び前条の罪の未遂は、罰する。 

 

 殺人罪の客体は「人」です。この点について、人の始期と終期が問題となることがあります。このようなことがなぜ問題になるのでしょうか? 

 

まず、人の始期について、現行法は、「人」と「胎児」を分けて規定しています。そのため、「胎児」を殺す行為は殺人罪ではなく堕胎罪(刑212条等)で処罰されます。 

 

・刑法212条 : 妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、1年以下の懲役に処する。

 

 そうすると、いつから「胎児」が「人」になるのかが問題となります。学説では、人の始期について、一部露出説(胎児が母体から一部露出した時点、判例)、全部露出説(胎児が母体から身体全体が露出した時点、独立生存可能性説等の見解が存在します。 

 

 次に、人の終期について、人が死んだ後にその死体を傷つけても、せいぜい死体損壊罪(刑190条)が成立するにすぎないのが原則です。そのため、いつ人が死亡したと認定するかが問題となります。この点、学説では、心臓死説心拍・呼吸停止、瞳孔反射の喪失の3要件を充たした時点、三徴候説ともいう、脳死説が存在します。 

 

 なお、殺人罪は被害者に自殺意思(自由な意思に基づき、死について同意している場合)がなかった場合に成立します。他方、被害者自殺意思があった場合には、自殺関与・同意殺人罪(刑202条)のみが成立し、殺人罪は成立しません。 

 

・刑法202条 : 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。 

 

例② AはBに頼まれ、Bを殺した 

 

この場合、AはBに頼まれてBを殺しているので、殺人罪ではなく、同意殺人罪が成立します。 

 

2.殺人罪の故意 

 

 殺人罪は故意犯です。そのため、殺人罪が成立するためには、犯罪事実の認識が必要となります(刑38条1項) 

 

・刑法38条1項 : 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。 

 

 AはBをナイフで刺して殺してしまったが、Aに殺意はなかった。 

 

 この場合、AはBが死ぬことを認識していません。そのため、殺人罪は成立せず、傷害致死罪(刑205条)が成立するにとどまります。 

 

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