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【判例解説】財産上の損害①(各論):最高裁昭和34年9月28日第二小法廷決定 

Last Updated on 2021年8月3日

 

Point 
1.被害者の経済的損失が軽微であっても、詐欺罪は成立しうる。 

 

1.事案の概要     

 

 被告人は、市販されている普通の電気按摩器(ドル・バイブレーター)を、疾病に効く入手困難な特殊治療器であるかのように装い、これを17名の者に売り、現金2200円ないし2400円の交付を受けました。なお、ドル・バイブレーターの時価は、第一審では1500円と認定されています。  

 

(関連条文) 

・刑法246条1項 「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。 

 

【争点】 

 被告人に詐欺罪が成立するか 

 

2.判旨と解説 

 

(本件は、財産上の損害の有無についてのリーディングケースとされていますが、ここでは最近の判例に従い、財産上の損害の有無といった観点からではなく、欺罔行為があるかといった観点から解説します) 

 

*詐欺罪の解説はこちら 

 

 詐欺罪が成立するには、欺罔行為が必要です。欺罔行為とは、交付の判断の基礎となる重要な事項を偽る行為を言います。 

 

 本件ドル・バイブレーターの取引は、疾病に効き、かつこれが一般に入手困難であることが重要な要素となっていました。そうすると、ドル・バイブレーターの売買代金と実際の時価の差額にかかわらず、これを偽った被告人の行為は、重要な事項について偽ったものと評価できます。したがって、被告人の行為は欺罔行為にあたり、これにより金銭の交付を受けた被告人には詐欺罪が成立します。 

 

「たとえ相当価格の商品を提供したとしても、事実を告知するときは相手方が金員を交付しないような場合において、ことさら商品の効能などにつき真実に反する誇大な事実を告知して相手方を誤信させ、金員の交付を受けた場合は、詐欺罪が成立する。そして本件の各ドル・バイブレーターが所論のようにD型で、その小売価格が2100円であったとしても、原判決の是認した第一審判決が確定した事実によると、被告人は判示A外16名に対し判示のごとき虚構の事実を申し向けて誤信させ、同人らから右各ドル・バイブレーターの売買、保証金などの名義のもとに判示各現金の交付を受けたというのであるから、被告人の本件各所為が詐欺罪を構成するとした原判示は正当に帰する。」 

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