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【判例解説】告訴期間の起算点(捜査):大阪高判平成16年4月22日 

 

Point 
1.インターネット上で行われた名誉毀損罪について、告訴期間の起算点が、名誉を毀損する書き込みが行われた時点より遅い時点となるとされた事例 

 

1.事案の概要 

 

 被告人は、名誉を毀損する書き込みをホームページ上に行いました。被害者は、平成13年頃にその事実を知りましたが、告訴をしたのは平成15年4月22日でした。 

 

(関連条文) 

・刑法230条1項・・・公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 

・刑法232条1項・・・この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 

・刑事訴訟法230条・・・犯罪により害を被った者は、告訴をすることができる。  

・刑事訴訟法235条・・・親告罪の告訴は、犯人を知った日から6箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴については、この限りでない。 

 

 

【争点】  

・「犯人を知った日」の解釈 

 

 

2.判旨と解説 

 

 名誉毀損罪は親告罪です。そのため、適法な告訴が無ければ被疑者を起訴することはできません。そして告訴は、犯人を知った時から6カ月を経過した場合にはすることはできません。しかし本件で告訴がされたのは、被害者が犯罪事実や犯人を認識してから約1年半が経過してからです。そこで被告人は、本件では告訴期間を経過して告訴がされているにもかかわらず、第1審は有罪判決を出したので、これを破棄すべきと主張しました。 

 

 犯人を知った日とは、犯人が誰かを特定しうる程度に認識した状態となった日をいいます(最判昭和39年11月10日)。そして、犯罪が終了しない限り、告訴期間の起算日は設定されないと考えられています。例えば、1月1日に未成年であるXが監禁され、その事実と犯人を親権者たるYが知った場合、起算日は1月2日(初日不算入の原則)ではなく、Xが解放された日の翌日となります。 

 

 本件では、名誉を毀損する書き込みは、しばらくインターネット上に残されていました。そこで、名誉毀損罪が終了するのはいつの時点となるかが問題になります。この点について高裁は、被告人が被疑者の名誉を毀損する書き込みをしてこれが公開された時点で、同罪は既遂に達するとします。 

 

しかし続けて、同罪は抽象的危険犯であって、名誉を毀損する書き込みがインターネット上で公開されている場合には、被害発生の抽象的危険が維持されているとします。これはインターネット上の書き込みという本件での事情が大きく影響しています。名誉毀損罪として想定されていたケースは、公開の場で他人の名誉を毀損する発言をすること等でした。この場合、犯罪行為は名誉を毀損する発言で終了します。しかし、インターネット上での名誉毀損は、名誉を毀損する書き込みをした後でも、犯罪行為の内容たる書き込みは半永久的に残ることになります。そうすると、告訴期間の起算点を考えるにあたってはそのような性質も考慮する必要があります*。 

 

そのため本件では、既遂に達した後も、未だ犯罪は終了せず継続しているとしました。そして、本件では犯罪が終了したのは平成15年3月上旬であるから、平成15年4月22日にされた告訴は適法としました。 

 

 「刑訴法235条1項にいう「犯人を知った日」とは,犯罪終了後において,告訴権者が犯人が誰であるかを知った日をいい,犯罪の継続中に告訴権者が犯人を知ったとしても,その日をもって告訴期間の起算日とされることはない。そこで検討するのに,名誉毀損罪は抽象的危険犯であるところ,関係証拠によると,原判示のとおり,被告人は,平成13年7月5日,C及びBの名誉を毀損する記事(以下,「本件記事」という。)をサーバーコンピュータに記憶・蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者らに閲覧可能な状態を設定したものであり,これによって,両名の名誉に対する侵害の抽象的危険が発生し,本件名誉毀損罪は既遂に達したというべきであるが,その後,本件記事は,少なくとも平成15年6月末ころまで,サーバーコンピュータから削除されることなく,利用者の閲覧可能な状態に置かれたままであったもので,被害発生の抽象的危険が維持されていたといえるから,このような類型の名誉毀損罪においては,既遂に達した後も,未だ犯罪は終了せず,継続していると解される。もっとも,関係証拠によると,平成15年3月9日,大阪府泉佐野警察署警察官によって,本件名誉毀損事件を被疑事実として被告人方が捜索されたことなどがきっかけとなり,その2,3日後,被告人は,同警察署に電話し,自分の名前を名乗った上で,「自分が書き込んだ掲示板がまだ残っており,消したいが,パスワードを忘れてしまったので消せない。ホームページの管理人の電話を教えてほしい。」旨申し入れたところ,同警察署側において,被告人に対し,「こちらから管理人に連絡の上削除してもらうよう依頼する。」と返答した上,直ちに本件ホームページの管理者であるDに対して,「パスワードを忘れたので消せないと言ってきた。そちらで削除してやってほしい。」と申入れ,同人もこれに異を唱えていなかった事実が認められるところ、この事実は,被告人が,自らの先行行為により惹起させた被害発生の抽象的危険を解消するために課せられていた義務を果たしたと評価できるから,爾後も本件記事が削除されずに残っていたとはいえ,被告人が上記申入れをした時点をもって,本件名誉毀損の犯罪は終了したと解するのが相当である。しかして,Bの本件告訴は,上記申入れの時点において犯罪が終了した後6ヶ月以内であることが明らかな平成15年4月22日になされているから,適法である。」 

 

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