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【判例解説】犯罪により害を被った者の解釈(捜査):最判昭和45年12月22日 

Last Updated on 2022年5月15日

 

Point 
1.器物損壊罪の告訴権者は、被害物品の所有権者に限られない。 

 

(関連条文)  

・刑法261条・・・前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。 

・刑法262条・・・自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は配偶者居住権が設定されたものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。 

・刑法264条・・・第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 

・刑事訴訟法230条・・・犯罪により害を被った者は、告訴をすることができる。 

 

【争点】 

・器物損壊罪の被害品を所有する者以外も告訴権者に当たるか 

 

1.判旨と解説 

 

被告人は器物損壊罪の被疑事実で起訴されました。 

 

 器物損壊罪は親告罪とされているため、告訴権者の告訴がない場合、検察官は公訴を提起することができません。本件では、本件土地・家屋の共有者である者の妻が告訴をしていますが、その人が「犯罪により害を被った者」に該当するかが問題になりました。 

 

明治45年の大審院判決は「刑法第二百六十一条ノ毀棄罪ノ被害者ハ毀棄セラレタル物ノ所有者ニ外ナラサレハ告訴権ヲ有スル者ハ其所有者ニ限レルモノトス」としていました。これに従うと、器物損壊罪の告訴権者は被害物品の所有者に限られることになります。 

 

しかし原審は、「占有権原に基づいて当該物件を占有使用している者は、これを使用収益することによって、当該物件の~効用を享受しているのであるから、右のような用益権者が適法に享受する利益もまた所有権者のそれとは別個に保護されて然るべきである」としています。その根拠として、刑法262条が、自己のものであっても賃貸しているものについては器物損壊罪が成立するとしていることが挙げられています。つまり、器物損壊罪は所有権者だけを保護しているのではないのだから、この規定を「犯罪により害を被った者」の解釈にも、その法理を用いるべきと考えたのです。 

 

最高裁は原審の判断を是認し、本件土地・家屋の共有者の妻に告訴権を認めました。 

 

 「刑訴法230条は、「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。」と規定しているのであるから、右大審院判決がこれを毀棄された物の所有者に限るとしたのは、狭きに失するものといわなければならない。そして、原判決の認定したところによると、告訴をした松本シズヱは、本件ブロツク塀、その築造されている土地およびその土地上の家屋の共有者の一人である松本政男の妻で、右家屋に、米国に出かせぎに行つている同人のるすを守つて子供らと居住し、右塀によつて居住の平穏等を維持していたものであるというのであつて、このような事実関係のもとにおいては、右松本シズヱは、本件ブロツク塀の損壊により害を被つた者として、告訴権を有するものと解するのが相当である。」  

 

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