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【判例解説】 初回接見(捜査):最判平成12年6月13日

Last Updated on 2023年2月6日

 

Point 
1.逮捕後最初の接見に関しては、捜査機関は特別の配慮が必要である。 

 

1.事案の概要 

 平成2年10月10日、被疑者は東京都公安条例違反で逮捕されました。被疑者は、午後4時10分ごろ、警察署に連行されました。午後4時35分ごろ、弁護人は、被疑者と接見しようと警察署を尋ねましたが、警察官は、被疑者が取調中であることを理由に、しばらく待ってほしいと述べました。

 

 弁護人は、その後接見を行うことができず、警察官は、接見の日時を翌日午前10時以降に指定する旨を弁護人に告げました。そして、午後6時ごろ、弁護人は警察署から引き上げました。なお、Xは、午後5時30ごろから午後6時15分ごろまで食事をとっており、その後再度取調べが行われました。 

 被疑者らは国家賠償請求訴訟を提起しました。

 

(関連条文) 

・憲法34条 :「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。~」 

・刑事訴訟法39条1項 :「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、第31条第2項の許可があった後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。 

刑事訴訟法39条3項 :「検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。 

 

2.判旨と解説 

 

 

*接見交通権についての説明はこちら 

 

 捜査機関は、「捜査のために必要があるとき」には、接見指定をすることができます(刑訴39条3項本文)。具体的には、右接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に、接見指定をすることが許されます。 

 

*接見指定の要件について判示した判例についてこちら 

 

検察官、検察事務官又は司法警察職員(以下「捜査機関」という。)は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)から被疑者との接見又は書類若しくは物の授受(以下「接見等」という。)の申出があったときは、原則としていつでも接見等の機会を与えなければならないのであり、刑訴法三九条三項本文にいう「捜査のため必要があるとき」とは、右接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。そして、弁護人等から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として右にいう取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たると解すべきである(前掲平成一一年三月二四日大法廷判決参照)。 

 

 もっとも、接見指定は被疑者の防御の準備の権利を不当に害するものであってはなりません(同項但書)。接見指定をする場合には、捜査機関は弁護人らと協議し、なるべく速やかに接見ができるよう措置を採らなければなりません。 

 

 その場合でも、特に、逮捕後最初の接見は、被疑者が取調べを受けるに当たって助言を受ける最初の機会で、憲法が定める弁護人依頼権の保障(憲法34条)の出発点です。 

 

 そこで最高裁は、最初の接見の申出を受けた捜査機関は、接見指定が認められる場合でも、即時又は近接した時点での接見を認めることが可能か否かを検討し、これが可能なときは、特段の事情のない限り、比較的短時間であっても接見を認めるようにすべきであるとします。

 

 そして、このような場合に、被疑者の取調べを理由として右時点での接見を拒否するような指定をし、被疑者と弁護人となろうとする者との初回の接見の機会を遅らせることは、被疑者防御の準備をする権利を不当に制限するものであるしました。 

 

右のように、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは捜査に顕著な支障が生じるときは、捜査機関は、弁護人等と協議の上、接見指定をすることができるのであるが、その場合でも、その指定は、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならないのであって(刑訴法三九条三項ただし書)、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないものと解すべきである。とりわけ、弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとっては、弁護人の選任を目的とし、かつ、今後捜査機関の取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留又は拘禁されないとする憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である。したがって、右のような接見の申出を受けた捜査機関としては、前記の接見指定の要件が具備された場合でも、その指定に当たっては、弁護人となろうとする者と協議して、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、これが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、犯罪事実の要旨の告知等被疑者の引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く指紋採取、写真撮影等所要の手続を終えた後において、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであり、このような場合に、被疑者の取調べを理由として右時点での接見を拒否するような指定をし、被疑者と弁護人となろうとする者との初回の接見の機会を遅らせることは、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するものといわなければならない。

 

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