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【判例解説】訴因の特定④(公訴の提起):東京高判平成20年9月25日 

 

Point 
1.本件訴因は、犯行日時、犯行場所が概括的で、犯行態様が不詳となっているが、本件事情の下では、訴因の特定に欠けるところはない 

 

1.事案の概要 

 

被告人は、平成18年「11月25日午前3時30分ころから同日午前9時30分ころまでの間,岐阜県,愛知県ないしそれらの周辺地域において,殺意をもって,不詳の方法により,P8(当時24歳)を殺害」したなどとして、殺人罪等で起訴されました。 

 

(関連条文)  

・刑事訴訟法256条1項 「公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。」  

・同条2項 「起訴状には、左の事項を記載しなければならない。」 2号 「公訴事実」  

・同条3項 「公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。」  

・刑事訴訟法338条 「左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。」 4号 「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。」  

 

【争点】 

・本件訴因は特定されているといえるか 

 

2.判旨と解説 

 

被告人は、本件訴因は特定性に欠けることを理由に控訴しました。 

 

*訴因の特定についての解説はこちら 

 

高裁は以下の事情を指摘し、本件では犯行の日時等を詳らかにできない事情があり、また、このような公訴事実の記載であっても、他の犯罪と識別限定されており、被告人の防御の範囲を示しているから、訴因の特定に欠けるところはないとしました。 

 

①被害者がすでに死亡し遺体の損傷がひどい 

②犯行の目撃者がいない 

③被告人は捜査の当初から一貫して犯行を否認叉は黙秘している 

 

「本件殺人の公訴事実は,殺害の日時が「平成18年11月25日午前3時9分ころから同日午前9時53分ころまでの間」,殺害の場所が「岐阜県,愛知県ないしそれらの周辺地域」と概括的な記載にとどまり,さらに,殺害の方法が「不詳」となっているが,殺害の対象については「B(当時24年)」(以下「被害者」という。)と特定されている。本件においては,被害者が既に死亡し,遺体の損傷がひどく,また,犯行の目撃者もいない上,被告人も捜査の当初から一貫して犯行を否認又は黙秘しており,殺害の日時,場所,方法及び死因をつまびらかにすることができない特殊な事情がある。本件殺人の公訴事実については,検察官において,当時の証拠に基づいて,できる限り,犯行の日時,場所,方法等を特定したものと認められる。前記の公訴事実程度の記載であっても,他の犯罪と十分に識別されて限定されている上,被告人の防御の範囲を示しており,訴因の特定を欠いているとまではいえない。本件殺人の公訴を棄却しなかった原審の措置は相当であって,原判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反はない。」 

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