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【判例解説】罰条変更の要否(公訴の提起):最判昭和53年2月16日 

 

Point 
1.訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防禦に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更せずに、起訴状に記載されていない罰条を適用することができる。 

 

1.事案の概要 

 

被告人はXらと共謀のうえ、被害者らに対し、殴る蹴るなどの暴力を加え傷害を負わせたとして起訴されました。そして、その罪名及び罰条は、「傷害、暴行 刑法第204条、第208条、第60条」となっていました。 

 

第1審は、刑法60条、204条を適用し被告人を有罪としました。これに被告人が控訴したところ、控訴審は破棄自判し、暴力行為等処罰に関する法律1条を適用し被告人を有罪としました。 

 

(関連条文) 

・刑事訴訟法256条1項 「公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。」   

・同条2項 「起訴状には、左の事項を記載しなければならない。」  

 ・1号 「被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項」  

 ・2号 「公訴事実」   

 ・3号 「罪名」 

・刑事訴訟法256条4項 「罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。」 

 

【争点】 

・罰条変更をせずに、訴因に記載されていない法律を適用することは許されるか 

 

2.判旨と解説 

 

 本件で控訴審は、起訴状に記載のない、暴力行為等処罰に関する法律1条を適用し被告人を有罪としています。しかし、訴状に記載のない罰条を適用することは許されるのでしょうか? 

 

*起訴についての解説はこちら 

 

法令の適用は裁判所の職務ですから、論理必然的に、起訴状に罰条の記載が必須といえるわけではありません。むしろ、法令の適用が裁判所の職務であるなら、起訴状に罰条の記載は不要とする制度も考えられるでしょう。それでも、法が起訴状に罰条の記載を求めたのは、 

被告人の防御に配慮したためです。 

 

 しかし、起訴状に罰条の記載が要求されても、法令の適用は裁判所の職務であることは変わりありません。そのため、起訴状に記載のない法令であっても、裁判所は判決にこれを適用できると解すべきです。 

 

もっとも、被告人の防御に配慮した趣旨を没却するわけにもいきません。そこで最高裁は、訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防禦に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更の手続を経ないで、起訴状に記載されていない罰条であってもこれを適用することができるとしました。そして結論として、本件で罰条変更の手続きを経ないで起訴状に記載のない罰条を適用した措置は適法であるとしました。 

 

「起訴状における罰条の記載は、訴因をより一層特定させて被告人の防禦に遺憾のないようにするため法律上要請されているものであり、裁判所による法令の適用をその範囲内に拘束するためのものではないと解すべきである。それ故、裁判所は、訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防禦に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更の手続を経ないで、起訴状に記載されていない罰条であつてもこれを適用することができるものというべきである。本件の場合、暴力行為等処罰に関する法律一条の罪にあたる事実が訴因によつて十分に明示されているから、原審が、起訴状に記載された刑法二〇八条の罰条を変更させる手続を経ないで、右法律一条を適用したからといつて、被告人の防禦に実質的な不利益が生じたものとはいえない。したがつて、原判決の判断は、この点でも正当である。」 

 

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