刑事訴訟法328条は、刑事訴訟法321条から324条(伝聞例外)に該当しない証拠であっても、証拠能力が肯定される場合について規定しています(弾劾証拠)。
・刑事訴訟法328条 「第321条乃至第324条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であっても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。」
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この規定により証拠として使用できるのは、自己矛盾供述に限られると解されています(最高裁平成18年11月7日刑集60巻9号561頁、限定説)。
例えば、Xが公判で「AがBをナイフで刺して殺害するのを見ていない」と証言したとします。他方、Xは、事件発生直後の取調べでは、「AがBをナイフで刺して殺害するのを見た」と証言しており、その旨が記載された調書が作成されていたとします。
当該調書は、328条により証拠とすることができます。なぜなら、Xの公判での発言は、以前に自身が取調べで述べたものと矛盾するからです(なおこの場合、Xの発言が記載されている調書は、内容の真実性ではなく、その発言が存在すること自体が問題となっていますから、非伝聞となります)。
他方、判例によると、取調べを受けたのがYであった場合には、当該調書は328条により証拠として使用することはできないことになります。