犯罪には公訴時効と言うものがあります。時効期間が経過した後に、検察官が公訴を提起した場合、裁判所は免訴の判決をしなければなりません(刑訴337条)。
・刑事訴訟法337条 「左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。」
・同条4号 「時効が完成したとき。」
*公訴の提起についての解説はこちら
公訴時効制度が存在する理由については、以下の考え方が存在します。
・実体法説・・・犯行から時間が経過したことで、その犯罪の社会的影響が弱まり、刑罰権が消滅する
・訴訟法説・・・犯行から時間が経過したことで、証拠が散逸し、公正な裁判が実現できなくなる
・競合説・・・実体法説、訴訟法説双方の理由を根拠とする
・新訴訟法説・・・犯行から長期間公訴が提起されないという事実状態を尊重し、国家の訴追権を制限する
最高裁は、時効制度の趣旨について「時の経過に応じて公訴権を制限する訴訟法規を通じて処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにある」としています(最高裁平成27年12月3日第一小法廷判決)。もっとも、時効制度は不要と考える方も多く存在し、時効制度の要否については議論があります。
時効の起算点は、犯罪行為が終了した時です(刑訴253条1項)。犯罪行為と結果発生の時期がずれる犯罪の場合(例えば、傷害致死罪等の結果的加重犯)、結果発生時が時効の起算点になると解されています。
・刑事訴訟法253条1項 「時効は、犯罪行為が終った時から進行する。」
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公訴時効の期間については、犯罪の重大さに応じて区別がされています(刑訴250条)。ここでは、主要な犯罪についてのみ紹介します。
・刑事訴訟法250条1項 「時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。」・・・殺人罪や強盗殺人罪は、「人を死亡させた罪」で「死刑に当たる」犯罪のため、公訴時効期間はありません。
・1号 「無期の懲役又は禁錮に当たる罪については30年」・・・強制わいせつ等致死罪
・2号 「長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪については20年」・・・傷害致死罪、危険運転致死罪
・3号 「前二号に掲げる罪以外の罪については10年」・・・業務上過失致死罪
・刑事訴訟法250条2項 「時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。」
・1号 「死刑に当たる罪については25年」・・・現住建造物等放火罪
・2号 「無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年」・・・強制わいせつ等致傷罪
・3号 「長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年」・・・傷害罪、強盗罪
・4号 「長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年」・・・窃盗罪、恐喝罪、強制わいせつ罪
・5号 「長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年」・・・横領罪、背任罪
・6号 「長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年」・・・暴行罪、器物損壊罪、脅迫罪、住居侵入罪
・7号 「拘留又は科料に当たる罪については1年」・・・侮辱罪