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伝聞例外とは?わかりやすく解説!

Last Updated on 2020年12月16日

刑事訴訟法では、原則として伝聞証拠を証拠とすることはできません(刑訴320条1項) 

 

・刑事訴訟法320条1項 「321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。 

 

もっともこれには例外があり、伝聞証拠が刑事訴訟法321条以下に規定されている伝聞例外に該当する場合には、証拠とすることが許されます。 

 

*伝聞証拠についての解説はこちら 

*非伝聞についての解説はこちら 

 

伝聞証拠を証拠として使用できないのは供述の過程で生じうる誤りチェックすることができないためです。もっとも、例えば、証人が公判外で証言をした後に死亡してしまったとします。この証言内容が記載された調書を証拠として使用できないとなると、検察官としては困ってしまいます。他方伝聞証拠に対するチェックの方法として、反対尋問が内容の正確性を担保する唯一の手段ではありません。証言がされた状況のいかんによっては、反対尋問を経ずにその証拠に証拠能力を認めても良い場合もあります。 

 

そこで、刑事訴訟法321条以下は、伝聞証拠に該当する場合でも、これを使用する必要性があり、この証拠に信用性が認められる場合には、例外的に証拠として使用することが許されることを定めています。 

 

 以下では、321条以下について個別に説明します。 

 

1.321条 

 

 321条は、被告人以外の者が作成した供述書や、その者の供述を検察官等が聞き取って書面に記載した供述録取書について規定しています。 

 

(1)1項 

 

 321条1項は3号まで規定があり、これらに共通する要件として、その書面に供述者の署名・押印が記載されている点が挙げられますこれは、その書面が供述者の発言内容を正確に記したものか確認するためです。 

 

 321条1項柱書 「被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。 

 

同項1は、裁判の面前で行った供述を内容とする書面について規定しています。  

 

同項1 「裁判官の面前(第157条の4第1項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異った供述をしたとき。 

 

 

 例えば、捜査段階で証人尋問がされた場合(刑訴226条等)、他事件の公判で供述者が行った発言を内容とする公判調書がこれに該当します(なお、公判調書には供述者の署名・押印がないのが通常です。しかし、録取の正確性は裁判官の面前という事担保されていますので、署名・押印がなくとも証拠とすることができると解されいます。 

 

 同項2は、検察官の面前で行った供述を内容とする書面について規定しています。 

 

・同項2号 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異った供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。 

 

 目撃者等の参考人が、検察官から取調べを受けた際に作成された書面などがこれに該当します。 

 

 3号は被告人を除くこれら以外の者が行った供述を内容とする書面について規定しています。 

 

同項3 「2号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。但し、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。 

 

 警察官による取調べに置いて作成された調書(員面調書)などは同号に該当します。 

 

(2)2項以下 

 

 321条2項は、被告人以外の者が行った公判準備や公判期日における供述を録取した書面(公判調書等)や、裁判所・裁判官の行う検証の結果を記載した書面について証拠能力を認めています。  

 

・同条2項 「被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。 

 

 3項は、捜査機関が行った検証調書について規定しています。検証を行った者を公判期日において尋問し、作成の真正内容の正確性を供述した場合にこの書面を証拠とすることができます。 

 

・同条3項 「検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第1項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。 

 

4項は、裁判所の鑑定命令により鑑定を行った者が作成した鑑定書について証拠能力を認めています。 

 

・同条4項 「鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。  



2.322条 

 

 321条と異なり、322条は被告人の供述書ないし供述録取書について規定しています。被告人が誰に対して行った供述か関係なく、また、被告人が被疑としてではなく参考人として行った供述にも適用があります。被告人の署名・押印があり、内容が被告人に不利益なもの、又は特に信用すべき状況の下に行われた場合に証拠能力を肯定しています。

 

・刑事訴訟法322条1項 「被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第319条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。 

 

2項は、被告人が公判準備、公判期日に行った供述録取書について証拠能力を認めています。 

 

・同条2項 「被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる。」 

 

3.323条 

 

 323条は、特に信用すべき状況で作成された書面について証拠能力を肯定しています。  

 

・刑事訴訟法323条 「前3条に掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 

 

・1号 「戸籍謄本、公正証書謄本その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面」 

 

・2号 「商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面」 

 

・3号 「前2号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面 

 

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