証拠収集の手続きに違法性があった場合、獲得した証拠の証拠能力を否定すべきという議論が起こることは想像できると思います。違法に収集した証拠の証拠能力を否定すべきとする根拠は大きく3つあります。
1つ目は、司法の廉潔性です。捜査機関が違法に収集した証拠を基に裁判所が認定することは、司法に傷をつけるもので、国民の信頼を失ってしまうため、これを証拠とすることは許されないとします。
2つ目は、違法捜査抑止論です。違法に収集した証拠の証拠能力を肯定してしまうと、捜査機関は違法捜査が横行してしまう可能性があります。これを抑止するために違法収集証拠の証拠能力を排除しようとします。
3つ目は、適正手続論です。これは、適正な手続きを保障することで、被疑者・被告人の人権を保護しようとする考え方です。
最高裁は、令状主義の精神を没却する重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来のおける違法捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合には、違法に収集した証拠の証拠能力が否定されるとしています(最高裁昭和53年9月7日刑集32巻6号1672頁)。