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1.電話傍受は強制処分(刑事訴訟法197条1項)に当たる 2.電話傍受が許される要件を明らかにした |
①はこちら
次に、電話傍受を行う手続きについて言及します。本件当時は、電話傍受を目的とした法律や令状は存在しなかったけれど、以下の事情を踏まえると、先述した要件を満たす場合には、適切な検証許可状によって、電話傍受を行うことが許されたとします。
①電話傍受は、通話内容を認識・記録する点で検証の性質を有する
②裁判官は、当該電話傍受が、先述した要件を満たすか否かを審査できる
③検証許可状で傍受対象を特定する必要があるが、これは「検証すべき場所若しくは物」(刑事訴訟法219条1項)の記載に当たり、傍受すべき通話・傍受の方法等を出来る限り限定することで可能である。
④裁判官は、電話傍受の際に218条5項を準用して、電話傍受の実施に関し、適当な条件(第三者の立ち会わせ等)を付すことができる
・刑事訴訟法218条5項 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
⑤電話傍受の実施中、傍受すべき会話に該当するか不明のものがあっても、その判断に必要な限度の傍受は「必要な処分」(刑事訴訟法129条)として許されると解される。
・刑事訴訟法129条 検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができる。
「そこで、本件当時、電話傍受が法律に定められた強制処分の令状により可能であったか否かについて検討すると、電話傍受を直接の目的とした令状は存していなかったけれども、次のような点にかんがみると、前記の一定の要件を満たす場合に、対象の特定に資する適切な記載がある検証許可状により電話傍受を実施することは、本件当時においても法律上許されていたものと解するのが相当である。(一)電話傍受は、通話内容を聴覚により認識し、それを記録するという点で、五官の作用によって対象の存否、性質、状態、内容等を認識、保全する検証としての性質をも有するということができる。(二)裁判官は、捜査機関から提出される資料により、当該電話傍受が前記の要件を満たすか否かを事前に審査することが可能である。(三)検証許可状の「検証すべき場所若しくは物」(刑訴法二一九条一項)の記載に当たり、傍受すべき通話、傍受の対象となる電話回線、傍受実施の方法及び場所、傍受ができる期間をできる限り限定することにより、傍受対象の特定という要請を相当程度満たすことができる。(四)身体検査令状に関する同法二一八条五項は、その規定する条件の付加が強制処分の範囲、程度を減縮させる方向に作用する点において、身体検査令状以外の検証許可状にもその準用を肯定し得ると解されるから、裁判官は、電話傍受の実施に関し適当と認める条件、例えば、捜査機関以外の第三者を立ち会わせて、対象外と思料される通話内容の傍受を速やかに遮断する措置を採らせなければならない旨を検証の条件として付することができる。(五)なお、捜査機関において、電話傍受の実施中、傍受すべき通話に該当するかどうかが明らかでない通話について、その判断に必要な限度で、当該通話の傍受をすることは、同法一二九条所定の「必要な処分」に含まれると解し得る。」
「…検証許可状による場合、法律や規則上、通話当事者に対する事後通知の措置や通話当事者からの不服申立ては規定されておらず、その点に問題があることは否定し難いが、電話傍受は、これを行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合に限り、かつ、前述のような手続に従うことによって初めて実施され得ることなどを考慮すると、右の点を理由に検証許可状による電話傍受が許されなかったとまで解するのは相当でない。」
「…本件電話傍受は、前記の一定の要件を満たす場合において、対象をできる限り限定し、かつ、適切な条件を付した検証許可状により行われたものと認めることができる。以上のとおり、電話傍受は本件当時捜査の手段として法律上認められていなかったということはできず、また、本件検証許可状による電話傍受は法律の定める手続に従って行われたものと認められる。所論は、右と異なる解釈の下に違憲をいうものであって、その前提を欠くものといわなければならない。」