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[解説] 電話傍受(盗聴)の適法性①(捜査):最高裁平成11年12月16日第三小法廷決定

Point 

1.電話傍受は強制処分(刑事訴訟法197条1項)に当たる 

2.電話傍受が許される要件を明らかにした* 

*なお、現在では通信傍受法が制定されており、電話傍受は同法の定める要件に従って行われます。その意味では、本件で最高性が述べた電話傍受の要件は意義を失いました。 

1.事案の概要 

本件犯罪は、営利目的による覚せい剤の譲渡しで、暴力団による組織的、継続的な覚せい剤密売の一環として行われたものでした。密売の態様は以下のものでした。 

①暴力団組事務所のあるマンションの居室に設置された電話で客から覚せい剤買受けの注文を受ける 

②その客に一定の場所に赴くよう指示した上、右場所で覚せい剤の譲渡しに及ぶ 

 

しかし、電話を受ける担当者と、譲渡しを行う担当者は別人であり、それらの担当者や、両者の具体的連絡方法などを特定するに足りる証拠を収集することができませんでした。居室には二台の電話機が設置されており、一台は覚せい剤買受けの注文を受け付けるための専用電話である可能性が極めて高く、もう一台は受付担当者と譲渡し担当者との間の覚せい剤密売に関する連絡用電話である可能性がありました。そのため、右二台に関する電話傍受により得られる証拠は、覚せい剤密売の実態を解明し被疑者らを特定するために重要かつ必要なものであり、他の手段を用いて右目的を達成することは著しく困難でした。 

 

警察官は、裁判官に対し、電話傍受の許可を求めて、検証許可状を請求しました。そして、裁判官は、以下の記載をした検証許可状を発布しました。 

・検証すべき場所及び物 「A株式会社B支店一一三サービス担当試験室及び同支店保守管理にかかる同室内の機器」 

・検証すべき内容 「(前記二台の電話)に発着信される通話内容及び同室内の機器の状況(ただし、覚せい剤取引に関する通話内容に限定する)」 

・検証の期間 「平成六年七月二二日から同月二三日までの間(ただし、各日とも午後五時〇〇分から午後一一時〇〇分までの間に限る)」 

・検証の方法 「地方公務員二名を立ち会わせて通話内容を分配器のスピーカーで拡声して聴取するとともに録音する。その際、対象外と思料される通話内容については、スピーカーの音声遮断及び録音中止のため、立会人をして直ちに分配器の電源スイッチを切断させる。」 

 

警察官は、右検証許可状に基づき、右記載の各制限を遵守して、電話傍受を実施しました。 

 

(関連条文) 

・憲法21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 

検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 

・刑事訴訟法197条1項 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。 

 

【争点】 

・電話傍受は強制処分(197条1項但書)に該当するか 

 

2.判旨と解説 

※以下は判旨と解説になりますが、まず黒枠内で判決についてまとめたものを記載し、後の「」でその部分の判決文を原文のまま記載しています。解説だけで十分理解できますが、法律の勉強のためには原文のまま理解することも大切ですので、一度原文にも目を通してみることをお勧めします。

 

まず最高裁は、電話傍受は通信の秘密を侵害し、プライバシーを侵害する強制処分と解します。そして、電話傍受は憲法上全く許されないものではなく、以下の要件を満たした場合に、法律の定める手続きに従って行うことが許されるとしました。 

①被疑事件が重大な犯罪である 

②被疑者が罪を犯したと疑う十分な理由がある 

③傍受の対象となる電話において、被疑事件に関連する通話が行われる蓋然性がある 

④電話傍受以外の方法では、その事件に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難である 

⑤以上の事情が存在することを前提に、電話傍受により侵害される利益の内容・程度を考慮してもなお、電話傍受を行うことがやむを得ない 

 

「電話傍受は、通信の秘密を侵害し、ひいては、個人のプライバシーを侵害する強制処分であるが、一定の要件の下では、捜査の手段として憲法上全く許されないものではないと解すべきであって、…重大な犯罪に係る被疑事件について、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、かつ、当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性があるとともに、電話傍受以外の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存する場合において、電話傍受により侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められるときには、法律の定める手続に従ってこれを行うことも憲法上許されると解するのが相当である。」 

②はこちら

 

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