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【判例解説】実況見分調書の証拠能力と立会人の指示説明(証拠):最判昭和36年5月26日 

 

Point 
1.実況見分調書は、刑事訴訟法321条3項の書面に含まれる 

2.実況見分調書に、立会人の指示説明として被疑者等の供述が記載されていても、右供述をした立会人の署名押印を必要としない 

 

(関連条文) 

刑事訴訟法320条1項 「321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。  

・同法321条3項 「検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。 

 

【争点】  

・実況見分調書に証拠能力が認められるか 

・実況見分調書に立会人の指示説明が記載されている場合、その者の署名押印が必要か 

 

1.判旨と解説 

 

 本件では、捜査機関が作成した実況見分調書の証拠能力が争われました。実況見分調書とは、捜査機関が任意捜査として行う検証をいいます。任意捜査であるため、被告人等の同意があれば、令状を得なくても、実況見分を行うことができます。 

 

*証拠能力の解説はこちら 

*任意捜査の解説はこちら 

 

 実況見分調書は、その内容が真実であって初めて意味を持ちますので、これは伝聞証拠になります(刑事訴訟法320条)そのため、321条以下の規定が適用されない限り、証拠能力はありません。 

 

*伝聞証拠の解説はこちら 

 

 刑事訴訟法321条3項は、捜査機関が行う検証調書についての証拠能力について定めています。先述のように、実況見分調書は、被告人の同意の有無を除いては、検証と何ら違いはありません。そのため、実況見分調書は同項により証拠能力が肯定されます。 

 

 「捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も刑訴3213項所定の書面に包含されるものと解するを相当とすることは昭和3598日第一小法廷判決(刑集141114号37頁)の判示するところである。従つて、かかる実況見分調書は、たとえ被告人側においてこれを証拠とすることに同意しなくても、検証調書について刑訴3213項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができるのであるから、これと同旨に出た原判示(控訴趣意第一点についての判断前段)は正当である。所論引用の福岡高等裁判所判例は、司法警察員作成の実況見分書を証拠とすることができる事由を「被告人の同意」のみに限定しているわけではなく、該実況見分書の供述者(作成者)が公判期日において証人として尋問を受けたことをも「被告人の同意」と並んで「これを証拠とすることもできる事由」の一つに掲げているものと解すべく、結局前記第一小法廷判決及び本件原判決と同趣旨に帰するのであるから、所論判例違反の主張は失当である。 

 

 以上の話は、本件の1年前の最高裁判例で判示されています。本件では、実況見分調書に、立会人の発言が記載されており、その部分の証拠能力等が争われました。 

 

 実況見分調書は、これを作成した者の認識等を記載するのですが、その中に、被告人や目撃者等の立会人がした発言が記載されることが多々あります。 

 

 立会人の発言が実況見分調書に記載された場合、これをどのように利用するかで、証拠能力の判断に違いが生じます。 

 

立会人が、実況見分をするに際して、目的物等について必要な情報を提供することを、指示説明と言います例えば、交通事故の被害者が事故現場において「ここで車に轢かれた」旨の発言をしてこれが調書に記載された場合、一般に、これは以後行う検証の場所を指示しているに過ぎないので、これは指示説明にあたります。 

 

立会人の指示説明の記載は、実況見分の結果を記載したものにすぎず、独立した供述証拠として採用されたわけではありません。そのため、伝聞性は問題とならず、立会人の署名押印等の321条以下の要件を充足する必要はありません。 

 

最高裁は、本件は、実況見分調書に記載された立会人の発言は指示説明にあたるとします。そして、立会人の指示説明を含む実況見分調書全体を、刑事訴訟法321条3項によって証拠能力を認めた原審の判断を是認しました。 

 

なお、実況見分調書に記載された立会人の発言が、指示説明を超えて独立の供述証拠として扱われる場合、別途、伝聞性が問題になります(*最決平成17年9月27日) 

 

 「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の一つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従つて、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従つて、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としないものと解すべく(昭和五年三月二〇日大審院判決、刑集九巻四号二二一頁、同九年一月一七日大審院判決、刑集一三巻一号一頁参照)、これと同旨に出た原判示(控訴趣意第一点についての判断後段)は正当である。 

 

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