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【判例解説】刑事訴訟法321条1項2号の供述不能(証拠):最大判昭和27年4月9日 

Last Updated on 2022年9月8日

 

Point 
1.刑事訴訟法321条1項2号の供述不能事由は例示列挙 

 

(関連条文) 

・刑事訴訟法320条1項 「第321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない 

・321条1項 「被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる 

2号 「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なった供述をしたとき。但し、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。 

 

【争点】 

・刑事訴訟法321条1項2号の供述不能事由は例示列挙か 

 

1.判旨と解説 

 

 伝聞証拠は原則として証拠とすることはできません。もっとも、321条以下の規定に該当すれば、証拠とすることができます。 

 

*伝聞証拠の解説はこちら 

*伝聞例外の解説はこちら 

 

 刑事訴訟法321条1項2号は、「その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」を要件としています。これは供述不能と呼ばれます。本件では、供述不能事由が死亡等に限られるのか、あるいは、これらは例示でその他の供述が不可能と思われる場合も同号の要件を満たすかが問題になりました。 

 

 最高裁は、同号は、その供述者を裁判所において証人として尋問することを妨げる事由を列挙したものにすぎず、これと同様の事由が存在する場合において証拠能力を認めることを妨げないとします。そして、本件では、証言を拒絶した証人につき供述不能にあたるとしました。 

 

 「一件記録によると、原審の是認した第一審判決がその判示第二事実認定の証拠として所論の山口久児子の検察官に対する供述調書を採用していること、並びに右山口久児子が検察官の請求により第一審裁判所において証人として尋問せられた際本件公訴事実の存否に関する重要な事項につきその証言を拒絶したため、被告人において右調書記載の同証人の供述につき反対尋問の機会を得られなかつたことは、論旨の指摘するとおりである。~この規定にいわゆる「供述者が……供述することができないとき」としてその事由を掲記しているのは、もとよりその供述者を裁判所において証人として尋問することを妨ぐべき障碍事由を示したものに外ならないのであるから、これと同様又はそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨ぐるものではない。されば本件におけるが如く、山口久児子が第一審裁判所に証人として喚問されながらその証言を拒絶した場合にあつては、検察官の面前における同人の供述につき被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは右規定にいわゆる供述者の死亡した場合と何等選ぶところはないのであるから,原審が所論の山口久児子の検察官に対する供述調書の記載を、事実認定の資料に供した第一審判決を是認したからといつて、これを目して所論の如き違法があると即断することはできない。尤も証言拒絶の場合においては、一旦証言を拒絶しても爾後その決意を翻して任意証言をする場合が絶無とはいい得ないのであつて、この点においては供述者死亡の場合とは必ずしも事情を同じくするものではないが、現にその証言を拒絶している限りにおいては被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは全く同様であり、むしろ同条項にいわゆる供述者の国外にある場合に比すれば一層強き意味において、その供述を得ることができないものといわなければならない。そして、本件においては、山口久児子がその後証言拒絶の意思を翻したとの事実については当事者の主張は勿論それを窺い得べき証跡は記録上存在しない。それ故論旨は理由がない。 

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