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[解説] 昭和女子大事件(憲法の私人間適用Ⅱ):最高裁昭和49年7月19日第三小法廷判決

Last Updated on 2020年3月10日

Point 
1.私立大学と私人の関係を公的関係と捉えず、憲法の適用を否定 

1.事案の概要 

 Xは昭和女子大学(以下Y)の学生であった。Xはある法案に対する反対運動の一環として署名を集めたが、この行為がYの定める生活要録の規定に反しているとして取り調べを行った。すると、更なる違反の事実が発覚したため、Xに自宅謹慎を命じた。にもかかわらず、処分に反発したXは、女性週刊誌に手記を寄せたり、討論集会やラジオ放送に登場するなどし、Yの対応を批判した。Yは一連の行為が退学事由に当たるとして、Xを退学処分とした。そこでXは、学生たる地位の確認の訴えを提起した(なお、本件ではX2も存在するが、省略した)。 

2.判旨と解説 

※以下は判旨と解説になりますが、まず黒枠内で判決についてまとめたものを記載し、後の「」でその部分の判決文を原文のまま記載しています。解説だけで十分理解できますが、法律の勉強のためには原文のまま理解することも大切ですので、一度原文にも目を通してみることをお勧めします。   

まず、最高裁は、自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的としているとして、憲法が直接私人間に適用されないことを確認しました。このことは、私立大学と私人の関係を公的関係と捉えていないことを意味します。 

「…憲法一九条、二一条、二三条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であつて、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類 推適用されるものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和四三年(オ)第九三二 号同四八年一二月一二日判決・裁判所時報六三二号四頁)の示すところである。」

もっとも、「…ところで、大学は、国公立であると私立であるとを問わず、学生の教育と学術の研究を目的とする公共的な施設であり…」とも判示していますが、大学の公共性を認めつつ、これを私人間の関係と判断して、憲法の私人間適用を否定したことに関しては批判があります。 

憲法の私人間適用についての判例として、他に三菱樹脂事件女子若年定年制事件があります。 

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