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【判例解説】一罪一逮捕一勾留の原則と再逮捕・再勾留(捜査):仙台地決昭和49年5月16日 

 

Point 
1.2回目に行われた逮捕・勾留は一罪一逮捕一勾留の原則に反するので違法 

2.本件では、再逮捕・再勾留は認められない 

 

1.事案の概要 

 

被疑者は、昭和49218日に賭博被疑事件で逮捕・勾留され、37日に賭博開張図利、常習賭博(常習賭博については昭和48年23日、4日、14日の賭博の事実)で起訴されました。その後、昭和48年2月1日に行われた賭博事件につき取調を受けた後、保釈を許可され、その後は、任意捜査により右常習賭博事件、および別に行われた昭和48年5月初めころの賭博事件の取調べを受けました。 

  

一方、別の昭和48519日に行われた賭博の事実については、昭和4914日に事件および共犯者が判明し、427日に被疑者が判明し、5月9日に被疑者は逮捕されました。その際、逮捕請求書には、被疑者が本件以前に前記逮捕勾留がなされた旨の記載がなされていませんでした。その後、被疑者の勾留が請求され裁判官はこれを認めました。勾留決定に対し、被疑者は準抗告しました。時系列がややこしいので以下でまとめます。 

 

①被疑者、昭和48年2月1日に賭博をする(②で起訴後取調べを受けた。後に追起訴) 

②被疑者、昭和48年2月3日、4日、14日に賭博をする(昭和49年2月18日に逮捕・勾留、その後起訴・保釈された) 

③被疑者、昭和48年5月の初め頃に賭博をする(②で保釈後取調べを受けた。後に追起訴) 

④被疑者、昭和48年5月19日に賭博をする(昭和49年5月9日に逮捕され、現在勾留請求されている) 

 

(関連条文) 

・刑事訴訟法199条3項 「検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。」 

・刑事訴訟規則142条1項 「逮捕状の請求書には、次に掲げる事項その他逮捕状に記載することを要する事項及び逮捕状発付の要件たる事項を記載しなければならない。」 

・8号 「同一の犯罪事実又は現に捜査中である他の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨及びその犯罪事実」 

 

【争点】 

・2度目の逮捕・勾留は一罪一逮捕一勾留の原則に反して許されないか 

・再逮捕・再勾留は許されるか 

 

2.判旨と解説 

 

 被疑者は、①②③④で述べたように、何度も賭博を繰り返しています。そして、②の事件で逮捕・勾留され、結局、①②③の事実で起訴されています。もっともその時、④の事実では逮捕・勾留されていません。④の事件の被疑者が誰であるかについて、捜査機関は把握していなかったためです。 

 

 このような状況下で、検察官は④の被疑事実で被疑者を逮捕し、その勾留を請求しました。この請求は認められるでしょうか。なお、①②③④の賭博は、実体法上、常習賭博罪一罪が成立することが前提となります。 

 

*逮捕・勾留についての解説はこちら 

 

 逮捕・勾留は事件を単位に行われます(事件単位の原則)。被疑者は、②の事件で一度逮捕・勾留されています。 

 

*事件単位の原則の解説はこちら 

 

そして、逮捕・勾留は1つの事件につき、原則として1回しか行えません(一罪一逮捕一勾留の原則)。ここでいう一罪とは、実体法上一罪の関係にあるものをいうとされています。 

 

*一罪一逮捕一勾留の原則の解説はこちら 

 

被疑者はの事件で逮捕・勾留請求されていますが、前述のように、④と②は1つの常習賭博罪を構成します。そうすると、一度、常習賭博罪で逮捕・勾留されている被疑者を、再度、常習賭博罪の事実で逮捕・勾留することになるので、これは一罪一逮捕一勾留の原則に反することになります(なお、逮捕が認められたのは、先述のように逮捕状請求書に被疑者が以前逮捕・勾留された旨の記載がされなかったためです。)。 

 

 もっとも、捜査機関は、②の逮捕時に④の被疑者が誰であるかを把握していません。そのような場合に、一罪一逮捕一勾留の原則を形式的に適用して、④の勾留を認めなくてもよいのでしょうか。 

 

 この点地裁は、②の逮捕勾留時に、④について同時に捜査を行える可能性があった(捜査機関は、④の事件自体は、②の逮捕より約1ヵ月前に把握していた)ので、一罪一逮捕一勾留の原則を適用すべきとしました。 

 

 「本件常習賭博は、昭和四八年五月一九日になされたものであり、前記起訴にかかる常習賭博と一罪をなすものであり、その逮捕勾留中に同時に捜査を遂げうる可能性が存したのである。(本件は昭和四九年一月四日に塩釜警察署に認知されており、直ちに捜査を行えば本件被疑者を割り出すことは充分可能であつたのであり、事件自体が全く認知されていなかつた場合とは異なるのである。)従つて本件逮捕勾留は、同時処理の可能性のある常習一罪の一部についての逮捕勾留であるから、一罪一勾留の原則を適用すべきである。検察官の主張は一理あり、同時処理の可能性がない場合には妥当するものであるが、その可能性の存する場合には人権保護の見地から右原則を採用すべきであり、当裁判所は検察官の見解を採用しない。」 

 

 一罪一逮捕一勾留の原則が適用されるとしても、被疑者を同一事件で再逮捕・再勾留することは許されないのでしょうか。 

 

*再逮捕・再勾留についての解説はこちら 

 

 本件では、再逮捕の必要性が乏しく、また逮捕状請求書に以前に逮捕勾留がされたことをうかがわせる資料もなく司法審査を誤る可能性は十分にあったことから、勾留を認めた決定を取り消しました。 

 

*再逮捕・再勾留の適法性について判示した別の判決はこちら 

 

 「右のごとく本件逮捕勾留は一罪一勾留の原則により適法視しえないものであるが、本件は常習賭博中の一部の事件である関係上、一個の犯罪事実につき再度の逮捕勾留がなされた場合に該当すると思料されるので、再逮捕勾留の適否が問題となる。刑訴法一九九条三項、刑訴規則一四二条一項八号は、同一犯罪事実につき前に逮捕状の請求又は発付のあつた場合にはその事実および更に逮捕状を請求する事由を逮捕状請求書に記載することを義務づけている。右は不当な逮捕のむし返しを防ぐという司法抑制の実効性を確保するための措置であり、この記載を欠くことにより裁判官の判断を誤まらせる虞れを生じさせるものであるから、右記載を欠く逮捕状請求にもとづく逮捕状は違法無効であり、逮捕の前置を欠くことになるのでその勾留も違法とすべきである。同一の犯罪事実とは公訴事実の単一性および同一性がある犯罪事実であり本件においてもその単一性があり同一犯罪事実であるところ、前記認定のごとく前掲起訴にかかる常習賭博につき逮捕状の発付があつた事実の記載を欠き、違法というべきである。本件において実質的に再逮捕状の発付につきその司法審査を誤る可能性が存したかどうかであるが前記認定のごとく被疑者は保釈後、本件と一罪をなす常習賭博事件中、未取調の事件につき任意捜査に応じて取調を受けているのであり、本件につき一般的な逮捕要件としては格別、再逮捕の必要性が存するかどうかについては多大な疑問が残り、又、逮捕状発付当時以前に逮捕勾留がなされたことを窺わせる資料も存しなかつたのであつて前掲記載を欠いたことにより実質的に司法審査を誤る可能性は十分存したといわざるを得ない。」  

 

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