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【判例解説】賄賂①(刑法各論):最決平成24年10月15日

Last Updated on 2022年8月14日

 

Point 
1.換金の利益が賄賂にあたるとされた事案 

 

1.事案の概要 

 

被告人Aは福島県知事として同県の事務を管理し執行する地位にありました。そしてAは、同県が発注する建設工事に関して、一般競争入札の入札参加資格要件の決定競争入札の実施請負契約の締結等の権限を有していました。 

 

他方で被告人BはAの実弟で縫製品の製造、加工販売等を業とするC株式会社の代表取締役として同社を経営していました。福島県は、同県東部の総合開発の一環として行うダム本体建設工事について一般競争入札を経てD株式会社ほか2社の共同企業体に発注しました。被告人両名はDがダム工事を受注したときAから有利便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼の趣旨で、D関係者に対し、Cの所有する土地を買い取るように求め、これを承諾させました。その結果、上記関係者からその売買代金が振込送金されました。なお、その売買代金は、時価相当額でしたが、当時Cは、売買の対象となった土地を換金するのに苦労していました。 

 

(関連条文)  

・刑法197条1項前段 「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。 

 

【争点】 

換金の利益は賄賂罪の客体となるか

 

2.判旨と解説 

 

 賄賂罪が成立するには、賄賂を収受等する必要があります。賄賂とは、不正な利益の一切をいい、有形無形を問いません。本件では、Aが行った職務の対価として土地の売買がされていますが、その代金は時価相当額でした。このように、時価相当額で土地が売買された場合にも、賄賂の供与があったといえるのでしょうか。 

 

*賄賂罪の解説はこちら 

 

 この点最高裁は、思うように土地を売却できない状況にある場合は、たとえ時価相当額で売買がされたときでも、賄賂罪が成立するとしました。このような場合、土地についての換金の利益それ自体が、賄賂に該当するということです 

 

原判決の認定によれば,被告人Aは福島県知事であって,同県が発注する建設工事に関して上記の権限を有していたものであり,その実弟である被告人Bが代表取締役を務めるCにおいて,本件土地を早期に売却し,売買代金を会社再建の費用等に充てる必要性があったにもかかわらず,思うようにこれを売却できずにいる状況の中で,被告人両名が共謀の上,同県が発注した木戸ダム工事受注の謝礼の趣旨の下に,Fに本件土地を買い取ってもらい代金の支払を受けたというのであって,このような事実関係の下においては,本件土地の売買代金が時価相当額であったとしても,本件土地の売買による換金の利益は,被告人Aの職務についての対価性を有するものとして賄賂に当たると解するのが相当である。 

 

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