自白とは、被疑者・被告人による自己の犯罪を認める旨の供述を言います。例えば、警察官による取調べに対し「被害者を殺したのは自分だ」と告げる行為は、典型的な自白にあたります。
自白については憲法、刑事訴訟法に規定があります。文言に差異はありますが、内容は実質的に同一と解されています。自白が同条に該当する場合、証拠能力が否定されます。
・憲法38条2項 「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。」
・刑事訴訟法319条1項 「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない」
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自白について特別な規制がなされたのは以下の事態を避けるためです。
①自白内容が真実ならば、これだけで犯罪の証明が可能であることから、自白は非常に重要な証拠である
②通常、被告人は自己に不利益な供述をしないという経験則
③①②の特徴から、自白がされれば裁判所は自白を安易に認定し、そして有罪判決をしてしまう
④そうすると、捜査機関は捜査段階で自白獲得に躍起となり、自白強要がなされる
⑤自白を強要された被告人は、精神的苦痛から解放されるべく、真実でない自白をしてしまう可能性があり、誤判の危険性が高まる
もっとも、どの点に重点をおいて自白法則の根拠を説明するかについては見解が分かれます。
・虚偽排除説・・・強制等による自白は虚偽を含む可能性があるから、自白を排除する(⑤)
・人権擁護説・・・被告人に強制等して自白を強いることは、被告人の黙秘権を侵害するので、黙秘権を担保するためにも自白を排除する(④)
・違法排除説・・・被告人に強制等して自白を強いることは、違法な手続きであるから、自白を排除する(④)
判例は虚偽排除説的な立場を取っていると解されますが、自白の任意性を基準に判断した事例も存在するとされています。