刑事訴訟法は、逮捕や勾留により身体拘束された被疑者に、接見交通権を認めています。接見交通権とは、身体拘束された被疑者が有する、外部の者と面会したり、物の接受をしたりできる権利です。身体拘束された被疑者は、身体拘束期間中、外に出る事は出来ませんが、外部との接触が全面的に禁止されているわけではないのです。
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接見に関する規律の内容は、接見の対象が弁護人か、あるいは、弁護人以外の者かで異なっています。 以下で、わかりやすく解説します。
1.弁護人との接見交通
憲法は、被告人又は身体拘束された者に対して弁護人依頼権等を保障しています。
・憲法34条 :「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。~」
・憲法37条3項 :「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」
この権利保障を実効的なものとするために、刑事訴訟法では、身体拘束中の被疑者・被告人には、立会人無くして弁護人と接見することが認められています(刑事訴訟法39条1項)。
・刑事訴訟法39条1項 :「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、第31条第2項の許可があった後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。」
後述する、弁護人以外の者との接見交通権とは異なり、弁護人との接見を完全に禁止することはできません。もっとも、接見を認めるにあたっては、捜査との調整が必要になります。そこで、捜査機関は、「捜査のために必要があるとき」には、接見指定をすることができます(刑訴39条3項本文)。
*接見指定の要件について判示した判例はこちら
・刑事訴訟法39条3項 :「検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。」
もっとも、捜査のために接見指定が必要な場合であっても、被疑者の防御の準備をする権利を不当に制限することは許されません(上記刑訴39条3項但書)。例えば、身体拘束後最初の接見は、被疑者の防御のために特に重要なので、捜査機関はこれを認めるための措置を講じなければならないとされます。
*初回接見について判示した判例はこちら
なお、接見指定が許されるのは「公訴の提起前」に限られます(上記刑訴39条3項本文)。そのため、起訴後に被告人勾留が行われていたとしても、捜査の必要があるからと言って、接見指定をすることは、原則として許されません。
*起訴後に接見指定を認めた判例についてはこちら
また、接見交通は、立会人なくして行うことができるものです。立会人なくして接見をすることができる権利のことを、秘密交通権といいます。以上を前提にすると、接見に適した設備がない場所、つまり、秘密交通権が保障される場所がない場合、弁護人は、接見交通を要求することができないように思われます。この点について、秘密交通権が十分に保障されない場合でも、弁護人が要求したときは、接見を認めるべきとした判例があります。
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2.弁護人以外の者との接見交通
接見交通は、弁護人以外の者(家族や知人等)とも認められます(刑訴80条)。
・刑事訴訟法80条 :「勾留されている被告人は、第39条第1項に規定する者以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。勾引状により刑事施設に留置されている被告人も、同様である。」
もっとも、弁護人との接見交通とは異なり、逮捕中の接見の可否については規定されていません。また、弁護人との接見では、接見禁止等の措置は認められていませんが、弁護人以外との接見においては、これが認められています(刑訴81条)。