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[解説] 準現行犯、逮捕に伴う捜索・差押え-和光大事件(捜査):最高裁平成8年1月29日第三小法廷決定 

 

Point 
1.準現行犯逮捕の適法性を判断 

2.逮捕後一定の場所に移動してから、逮捕に伴う無令状の捜索・差押えを実施することが許される場合がある 

 

*逮捕についてはこちら 

*捜索・差押えについてはこちら 

*逮捕に伴う捜索・差押えについてはこちら 

 

1.事案の概要 

被告人A、兇器準備集合、傷害罪を犯し、犯行現場から逃走しました。キロメートル離れた派出所で勤務していた警察官事件の犯人が逃走中である等本件に関する無線情報を受けて逃走犯人を警戒していました。犯行終了後約一時間を経過したころ、警察官はAが通り掛かるのを見付け、その挙動や、小雨の中で傘もささずに着衣をぬらし靴も泥で汚れている様子を見て、職務質問のため停止するよう求めました。すると、同人が逃げ出したので、約300メートル追跡して追い付き、その際、同被告人が腕に籠手(剣道等で使用する防具)を装着しているのを認めたなどの事情があったため、同人を本件犯行の準現行犯人として逮捕しました 

また、被告人BCについては、本件の発生等に関する無線情報を受けて、警察官らが逃走犯人を捜索していました。本件犯行終了後約時間40分を経過したころ、犯行現場から約キロメートル離れた路上で着衣等が泥で汚れた両人を発見し、職務質問のため停止するよう求めました。すると同人らが小走りに逃げ出したので、数10メートル追跡して追い付き、その際、同被告人らの髪がべっとりぬれて靴は泥まみれであり、Cは顔面に新しい傷跡があって、血の混じったつばを吐いているなどの事情があったため、同被告人らを本件犯行の準現行犯人として逮捕しました 

 

(関連条文)  

・憲法33条: 「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 

・憲法35条1項 :「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由にいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」  

・刑事訴訟法212条2項:「左の各号の一にあたる者が、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。」 

・1号 犯人として追呼されているとき。 

・2号 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。 

・3号 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。 

・4号 誰何されて逃走しようとするとき。  

・刑事訴訟法218条1項 :「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。 

・刑事訴訟法220条1項 :「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第199条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第210条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。 

・同項1号 「人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。」 

・同項2号 「逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。」 

 

【争点】  

・本件準現行犯逮捕は適法か 

・逮捕後、一定の場所に移動してから被疑者の身体を捜索することは許されるか 

 



2.判旨と解説  

※以下は判旨と解説になりますが、まず黒枠内で判決についてまとめたものを記載し、後の「」でその部分の判決文を原文のまま記載しています。解説だけで十分理解できますが、法律の勉強のためには原文のまま理解することも大切ですので、一度原文にも目を通してみることをお勧めします。

 

捜査機関が被疑者を逮捕するには、裁判官が発する令状が必要なのが原則です。 

 

現行犯逮捕をする場合には令状は不要です。本件で被告人らは準現行犯人として逮捕されていますが、準現行犯は現行犯として扱われるので、令状なしで逮捕することが許容されるのです。 

 

もっとも、準現行犯逮捕をするためには、刑訴212条各号該当性が要求されます(その他にも時間的近接性、犯人の明白性必要と解されます本件において、被告人ら以下の事情がありました。 

 

警察官に呼び止められたことを機に逃走を始めたこと(4号該当) 

被告人らに傷跡があ(3号該当) 

籠手を装着している(2号該当) 

 

最高裁は、本件事情の下では、被告人らに対する準現行犯逮捕は適法としました。 

 

以上のような本件の事実関係の下では、被告人三名に対する本件各逮捕は、いずれも刑訴二一二条二項二号ないし四号に当たる者が罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときにされたものということができるから、本件各逮捕を適法と認めた原判断は、是認することができる。  

 

また、本件では、準現行犯逮捕後にXらを警察署や駐在所に連行し、Xらの所持品に対して捜索・差押えが行われました。 

 

捜索・差押えには令状が必要ですが、被疑者を逮捕する場合には、例外的に、令状なしで捜索・差押えをすることが許容されます。もっとも逮捕の現場で被疑者の身体を捜索することが適切でない場合があります。 

 

最高裁は、逮捕現場で被疑者の身体等を捜索・差押えをすると、被疑者の名誉を害す、被疑者らの抵抗により混乱が生ずる、又は現場付近の交通を妨げるおそれがあるといった事情その場で捜索・差押えを実施するのが適当でない場合には、適切な最寄りの場所に連行してから捜索・差押えを行うことも許されるとします。  

 

刑訴二二〇条一項二号によれば、搜査官は被疑者を逮捕する場合において必要があるときは逮捕の現場で捜索、差押え等の処分をすることができるところ、右の処分が逮捕した被疑者の身体又は所持品に対する捜索、差押えである場合においては、逮捕現場付近の状況に照らし、被疑者の名誉等を害し、被疑者らの抵抗による混乱を生じ、又は現場付近の交通を妨げるおそれがあるといった事情のため、その場で直ちに捜索、差押えを実施することが適当でないときには、速やかに被疑者を捜索、差押えの実施に適する最寄りの場所まで連行した上、これらの処分を実施することも、同号にいう「逮捕の現場」における捜索、差押えと同視することができ、適法な処分と解するのが相当である。 

  

 本件では、被告人らは店舗の裏や、道路の狭い路上で逮捕されており、また、逮捕後に興奮した被告人らが抵抗して混乱が生じる可能性がある等の事情あり逮捕の場で直ちに捜索・差押えを実施するのは適当でなかったので、適当な最寄りの場所まで連行した上で行われた本件捜索・差押えは適法としました。 

 

これを本件の場合についてみると、原判決の認定によれば、被告人Aが腕に装着していた籠手及び被告人B、同Cがそれぞれ持っていた所持品(バッグ等)は、いずれも逮捕の時に警察官らがその存在を現認したものの、逮捕後直ちには差しさえられず、被告人Aの逮捕場所からは約五〇〇メートル、被告人B、同Cの逮捕場所からは約三キロメートルの直線距離がある警視庁町田警察署に各被告人を連行した後に差し押さえられているが、被告人Aが本件により準現行犯逮捕された場所は店舗裏搬入口付近であって、逮捕直後の興奮さめやらぬ同被告人の抵抗を抑えて籠手を取り上げるのに適当な場所でなく、逃走を防止するためにも至急同被告人を警察車両に乗せる必要があった上、警察官らは、逮捕後直ちに右車両で同所を出発した後も、車内において実力で籠手を差し押さえようとすると、同被告人が抵抗して更に混乱を生ずるおそれがあったため、そのまま同被告人を右警察署に連行し、約五分を掛けて同署に到着した後間もなくその差押えを実施したというのである。また、被告人B、同Cが本件により準現行犯逮捕された場所も、道幅の狭い道路上であり、車両が通る危険性等もあった上、警察官らは、右逮捕場所近くの駐在所でいったん同被告人らの前記所持品の差押えに着手し、これを取り上げようとしたが、同被告人らの抵抗を受け、更に実力で差押えを実施しようとすると不測の事態を来すなど、混乱を招くおそれがあるとして、やむなく中止し、その後手配によって来た警察車両に同被告人らを乗せて右警察署に連行し、その後間もなく、逮捕の時点からは約一時間後に、その差押えを実施したというのである。以上のような本件の事実関係の下では、被告人三名に対する各差押えの手続は、いずれも、逮捕の場で直ちにその実施をすることが適当でなかったため、できる限り速やかに各被告人をその差押えを実施するのに適当な最寄りの場所まで連行した上で行われたものということができ、刑訴法二二〇条一項二号にいう「逮捕の現場」における差押えと同視することができるから、右各差押えの手続を適法と認めた原判断は、是認することができる。 

 

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