Skip to main content

捜索、差押え、領置とは?わかりやすく解説! 

Last Updated on 2020年10月16日

 捜査機関は、捜査において様々な強制処分・任意処分を行うことができます。例えば逮捕、捜索、差押え、領置、検証、鑑定等が挙げられます。ここでは、捜索、差押え、領置について説明します。 

 

*逮捕についてはこちら 

*強制処分についてはこちら 

*任意捜査についてはこちら 

 

1.捜索・差押えとは 

 捜索とは、一定の場所や物、人の身体において対象物を探す処分を指します。例えば、覚せい剤所持の被疑事実のある者に対しその者の家の中に存在すると疑われる覚せい剤を探す場合です。

これに対して、差押えとは物に対する他人の占有を排除し、自己の占有に移す処分を指します。例えば、上記例で覚せい剤を捜索中に、覚せい剤を発見し、これを取得する場合です。このように、捜索と差押えは非常に密接な関係にありますが、厳密には異なるものです 

 憲法は何人も、現行犯逮捕の場合、又は、令状による場合でない限り、捜索や押収(差押えと領置をあわせたものの対象とならないことを保障しています(憲法33条、35条1項) 

・憲法33条 :「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 

・憲法35条1項 :「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由にいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。 

 

これを受けて、刑事訴訟法は捜索・差押えの手続きを定めています。ここで詳しく解説します。 

 

まず、捜索差押令状を請求できるのは、検察官、検察事務官、司法警察員です(刑訴218条4項) 

・刑事訴訟法218条4項 :「第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。 

 

 捜索・差押えを行うためには、正当な理由が必要です上記憲法35条1項)。正当な理由とは、特定の犯罪が存在し、その犯罪が捜索・差押えの対象と関連性があること意味します。犯罪存在なかったり、殺人の被疑事実で覚せい剤の捜索・差押えを求めたりる場合には、正当な理由がないとされます。また、捜索・差押えには、その物が捜索の対象場所に存在する蓋然性が求められます。対象物が存在しないと思われる場所に強制的に立ち入って捜索をすることは有意義ではありませんし、捜索・差押えの対象となった場所・物を管理する人の権利を不当に害します。 

  加えて、捜索・差押えには必要性が要求されます(刑訴218条1項) 

・刑事訴訟法218条1項 :「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。 

 

先述のように、捜索・差押えは私人の権利を害する処分です。そのため、捜査比例の原則から、捜索・差押えの必要がない場合、又は、これをするのが相当でない場合に捜索・差押えをすることは認められません。 

捜索差押令状の請求に際しては、差押えるべき物、捜索すべき場所・身体・物、罪名等の記載が必要です(刑訴219条1項) 

・刑事訴訟法219条1項 :「前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない 

請求を受けた裁判官は、正当な理由、必要性等捜索・差押え要件を充たすか否かを判断し、これを充たすと判断した場合に令状を発布します上記刑訴218条1項) 

 

 捜索差押令状の執行は、令状請求の場面とは異なり、捜査機関全般が行えます(上記218条1項)。執行に際しては、令状を処分を受ける者に呈示しなければなりません(刑訴222条、110条) 

・刑事訴訟法222条1項 :「第九十九条第一項、第百条、第百二条から第百五条まで、第百十条から第百十二条まで、第百十四条、第百十五条及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第百十条、第百十一条の二、第百十二条、第百十四条、第百十八条、第百二十九条、第百三十一条及び第百三十七条から第百四十条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない。 

・刑事訴訟法110条:「差押状、記録命令付差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない。

 

呈示は、執行前に行うのが原則とされます。また、令状の執行に際しては、必要な処分(錠を開け、抵抗者を排除する等を行うことが許されます(刑訴111条1項) 

・刑事訴訟法111条1項 :「差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。 

 

2.領置とは 

 領置とは、強制を伴わない占有の取得を指します(刑訴221条) 

・刑事訴訟法221条 :「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。 

 

差押えは、対象者の抵抗を排除して、物の取得をする処分です。他方、領置は相手方による物の任意提出、又は、遺留品(犯行現場に落ちていた物を取得する処分なので、強制的な性質をもつものではありません。 

 

 このように、領置は強制的な処分ではないので、領置をするために令状を請求することは要しないとされます。 

 

*領置についての判例はこちら 

 

スポンサーリンク
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です