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【判例解説】脅迫の意義(各論):最高裁昭和35年3月18日第二小法廷判決 

Last Updated on 2021年1月11日

 

Point 
1.本件事実関係の下では、被告人に脅迫罪が成立する 

 

1.事案の概要 

 

 町村合併促進法により、A村はB市かC市に合併しなければならなくなりました。合併に際し、A村内部で強烈な抗争がありました。被告人はこの構想の最中、対立関係にある者に「出火御見舞申上げます火の元に御用心」「出火見舞申上マス火の用心に御注意」と記載した郵便はがきを送りました。 

 

(関連条文)  

・刑法222条1項 「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。 

 

【争点】 

・被告人の行為は脅迫にあたるか 

 

2.判旨と解説 

 

*脅迫罪の解説はこちら 

 

 本件で被告人は、被告人が送った郵便はがきは単なる出火見舞いにすぎず、これを受け取っても放火される危険がある畏怖するおそれはないとして、脅迫罪は成立しないと主張しました。 

 

 たしかに、良好な友人関係にある者がこのはがきを送った場合などには、脅迫罪は成立しないでしょう。 

 

 しかし、本件で被告人と被害者は強烈な抗争関係にありました。火災があったわけでもないのに、出火見舞いのはがきが送られてきた場合、被害者としては、今後対立関係ある者から放火されるのではないかと考えるのが通常でしょう。 

 

 最高裁はこれと同旨の判示をして、脅迫罪の成立を肯定しました。 

 

↓以下原文

なお所論は要するに刑法二二二条の脅迫罪は同条所定の法益に対して害悪を加うべきことを告知することによつて成立し、その害悪は一般に人を畏怖させるに足る程度のものでなければならないところ、本件二枚の葉書の各文面は、これを如何に解釈しても出火見舞にすぎず、一般人が右葉書を受取つても放火される危険があると畏怖の念を生ずることはないであらうから、仮に右葉書が被告人によつて差出されたものであるとしても被告人に脅迫罪の成立はない旨主張するけれども、本件におけるが如く、二つの派の抗争が熾烈に なつている時期に、一方の派の中心人物宅に、現実に出火もないのに、「出火御見舞申上げます、火の元に御用心」、「出火御見舞申上げます、火の用心に御注意」 という趣旨の文面の葉書が舞込めば、火をつけられるのではないかと畏怖するのが通常であるから、右は一般に人を畏怖させるに足る性質のものであると解して、本件被告人に脅迫罪の成立を認めた原審の判断は相当である。」 

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