Skip to main content

【判例解説】公共の危険の認識(各論):最高裁昭和60年3月28日第一小法廷判決 

 

Point 
1.110条1項の犯罪の成立には、公共の危険の認識を要しない 

 

1.事案の概要 

 

 被告人らは、対立する暴走グループのオートバイを焼損させようと、配下の者にその旨の指示をしました。これを承諾した配下の者数人は、Aの家屋一階の応接間のガラス窓から約30センチメートル離れた箇所に置かれたB所有のオートバイからガソリンを流失させ、これにライターで火をつけて同車を焼損させ、また、Aの家屋にも延焼させました。 

 

(関連条文) 

刑法110条1項 「放火して、前2条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。 

 

【争点】 

・110条1項について、犯罪成立のために公共の危険の認識を要するか 

 

2.判旨と解説 

 

 本件で被告人は、他人所有の建造物等以外に放火しています。また、被告人の行為により、Aの家屋が延焼しているので、公共の危険も発生したと言えます。 

 

*公共の危険の意義について述べた判例はこちら 

 

 もっとも、被告人としては、配下の者らにオートバイを燃やすよう指示しただけで公共の危険が発生(Aの家屋に延焼)することまでは認識していませんでした。そこで、本罪の成立に公共の危険の認識が必要か否かが問題となります。必要説に立った場合、本件被告人に同罪は成立せず、器物損壊等罪が成立しうるにとどまります。 

 

学説の多くは、認識必要説に立っています。主な理由は以下のとおりです。すなわち、自己所有の建造物や建造物以外の物を燃やす行為は何ら犯罪行為ではありません。これらの処罰を基礎づけるのは公共の危険の発生です。そうだとすると、責任主義の見地から公共の危険の認識を要求するべきだ、と。 

 

 しかし、本件で、公共の危険の認識必要説に立つことを最高裁として明らかにしました。 

 

なお、刑法一一〇条一項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はないものと解すべきであるから、これと同旨の見解に立ち、被告人に本件放火罪の共謀共同正犯の成立を認めた原判断は、記録に徴し正当として是認することができる。  

スポンサーリンク
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。