Skip to main content

【判例解説】公共の危険(各論):最高裁平成15年4月14日第三小法廷決定 

Last Updated on 2021年1月8日

 

Point 
1.公共の危険は108条、109条1項の建造物等に対する延焼の危険に限られず、不特定又は多数人の生命・身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる 

 

1.事案の概要 

 

被告人は長女が通学する小学校の担任所有自動車に放火しようと企て駐車場に無人でとめられていた被害車両に対し、ガソリンを車体のほぼ全体にかけた上これにガスライターで点火して放火しました。 

 

本件駐車場は市街地にあって公園及び他の駐車場に隣接し道路を挟んで前記小学校や農業協同組合の建物に隣接する位置関係にありました。また本件当時被害車両の近くには前記教諭以外の者の所有する2台の自動車が無人でとめられていました。そして被害車両のそばには、周囲を金属製の網等で囲んだゴミ集積場が設けられており同所に一般家庭等から出された可燃性のゴミ約300kgが置かれていました。 

 

被害車両には当時約55のガソリンが入っていましたが前記放火により被害車両から火が上がっているところをに来た者が発見しその通報により消防車が出動し消火活動により鎮火しました。本件火災により被害車両は焼損し更に傍にあった2車両と前記ゴミ集積場に延焼の危険が及びました。  

 

(関連条文) 

・刑法110条1項 「放火して、前2条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。 

 

【争点】 

・公共の危険の意義

2.判旨と解説 

 

 本件で被告人は、他人所有の車に放火していますが、これにより公共の危険が発生したと言えるかが問題となりました。公共の危険が発生していないと判断された場合、被告人に建造物等以外放火罪は成立せず、器物損壊等罪が成立しうにとどまります。 

 

 公共の危険を、108条や109条1項の客体に対する延焼の危険、あるいは生命・身体に対する危険限定的に捉える見解に依拠した場合、本件では、公共の危険が発生していないと評価されます。しかし最高裁はこの見解を取らず、不特定又は多数の人生命・身体や108条、109条1項の客体以外の財産に対する危険も公共の危険に含まれると判示しました。 

 

同法110条1項にいう「公共の危険」は,必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく,不特定又は多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である。そして,市街地の駐車場において,被害車両からの出火により,第1,第2車両に延焼の危険が及んだ等の本件事実関係の下では,同法110条1項にいう「公共の危険」の発生を肯定することができるというべきである。 

スポンサーリンク
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です