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1.将来の犯罪捜査は、一定の要件を充足した場合許される。 |
1.事案の概要
被告人は、昭和61年午前8時ころ、路上に駐車してあった車の右側サイドミラーをもぎとったとして、器物損壊罪で起訴されました。本件犯行は、通りに設置してあったテレビカメラによって撮影されていました。
(関連条文)
・刑事訴訟法189条2項 「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」
【争点】
・将来の犯罪捜査は許されるか
2.判旨と解説
捜査とは、捜査機関が行う公訴のための活動をいいます。
*捜査についての解説はこちら
公訴の提起は、少なくとも捜査機関から見れば、犯罪の存在を前提に行われます。そうすると、公訴のための捜査も、犯罪の存在を前提に行われるべきともいえます。このように考えると、将来発生する可能性のある犯罪の捜査は許されないとも考えられます。
しかし本件で東京高裁は、①当該現場で犯罪が発生する蓋然性がある②証拠収集・保全の必要性がある③具体的な方法が社会通念上相当である場合には、将来の犯罪捜査は許されるとしました。
判旨で言及されていませんが、将来の犯罪捜査を肯定する理由として①将来犯罪について捜査をする必要性が認められる場合が、実務上ある②過去の犯罪についての捜査も犯罪が存在する蓋然性を根拠に行われるため、将来の犯罪の発生につき蓋然性が認められる場合に捜査を認めても差し支えない、などが挙げられます。
「・・・当該現場において犯罪が発生する相当高度の蓋然性が認められる場合であり、あらかじめ証拠保全の手段、方法をとっておく必要性及び緊急性があり、かつ、その撮影、録画が社会通念に照らして相当と認められる方法でもって行われるときには、現に犯罪が行われる時点以前から犯罪の発生が予測される場所を継続的、自動的に撮影、録画することも許されると解すべきであ」る。