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事後強盗罪は、窃盗(窃盗犯人)が①財物奪還阻止目的②逮捕免脱目的③罪証隠滅目的で暴行・脅迫を加えた場合に成立します。
事後強盗罪の暴行・脅迫は、強盗罪の定める暴行・脅迫と同義です。相手方は窃盗の被害者に限られません。
例① XはY宅に侵入し本を盗んだ。すると帰宅したYに見つかりこれを取り返されそうになったので、暴行を加えた。
例② XはY宅に侵入し本を盗んだ。家を出た後、巡回していた警察官に取り押さえられそうになったので、これを防ぐために暴行を加えた。
例③ XはY宅に侵入し本を盗んだ。これをYに発見されたので、口封じのためYを殺害した。
上記例は、刑法237条が定める目的をもって暴行・脅迫を行っているので、事後強盗罪が成立する可能性があります。他方、窃盗犯人に上記目的がない場合には事後強盗罪が成立する余地はありません。
事後強盗罪が成立するには、窃盗の機会に暴行・脅迫が行われる必要があると解されています(通説・判例)。窃盗の機会性が否定された場合、事後強盗罪は成立しません。もっとも、その場合でも、被害者の返還請求権を奪ったとして、2項強盗罪が成立する余地はあります。
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なお、事後強盗罪は未遂も処罰されます(刑243条)。事後強盗罪が未遂となるか既遂となるかは、先行する窃盗が既遂か未遂かで決せられます(通説・判例)。
例④ XはY宅に侵入し、本を盗もうとしたが、帰ってきたYに見つかり捕まりそうになったので、Yに暴行を加えて逃走した。
例⑤ XはY宅に侵入し、本を盗んだ。すると、帰ってきたYに見つかり捕まりそうになったので、Yに暴行を加えたが、Yは強かったのでかなわず捕まった。
例④では事後強盗未遂、例⑤では事後強盗既遂となります。
・刑法243条 「第235条から第236条まで、第238条から第240条まで及び第241条第3項の罪の未遂は、罰する。」
なお、事後強盗罪について予備罪が成立するかについては争いがあります。
・刑法237条 「強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。」
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