刑法220条は、逮捕・監禁罪を定めています。これは、人の場所的移動の自由を保護法益としています。
不法にとは、警察官による適法な逮捕や、被逮捕者が同意していた場合等を除くという意味です。
1.逮捕とは
逮捕とは、直接的な強制作用を加えて場所的移動の自由を奪うことを指します。
この場合、Bは両足を縛られ、動けなくなっていますから、Aに逮捕罪が成立します。逮捕に該当する行為として、その他に、相手を羽交い絞めにしたりする行為が挙げられます。
逮捕罪は、場所的移動の自由を保護法益としています。この場合、Bは両手を縛られていますが、移動することに支障はありません。そのため、逮捕罪は成立しません(暴行罪にとどまる)。また、逮捕罪が成立するには時間的継続性が必要と解されています。そのため、一瞬だけ移動の自由を奪った場合等には、逮捕罪は成立しません。
*暴行罪についてはこちら
2.監禁とは
監禁とは、一定の場所からの脱出を困難にして場所的移動の自由を奪うことを指します。
例③ Aは、部屋で作業しているBを閉じ込め、Aは部屋から出られなくなった。
この場合、Bはその部屋から出ることができなくなっていますから、Aに監禁罪が成立します。監禁に該当する行為として、その他に、嫌がる者をバイクや車に乗せて走り続ける行為が挙げられます。
例④ Aは、Bを監禁しようとして、Bに暴行を加えた。その際、Bは腕を骨折した。
また、逮捕・監禁された者が、逮捕・監禁行為自体から、又は脱出しようとした際に、死傷した場合、逮捕等致死傷罪(刑221条)が成立します。この場合、Aに監禁致傷罪が成立します。
例⑤ Aは、Bを監禁した。そこで、Bを袋叩きにして、Bを負傷させた。
逮捕・監禁の機会に、逮捕・監禁された者に死傷させた場合、逮捕・監禁致傷罪ではなく、傷害罪が成立すると解されています。そのため、この場合、Aには監禁罪と傷害罪が別個成立します。
*傷害罪についてはこちら
【場所的移動の自由の内容】
場所的移動の自由の内容については、二つの見解があります。自由の内容の解釈によって、具体的事例の結論が変わる場合があるので、これはとても重要です。
一つの見解(通説)は、場所的移動の自由を、移動しようと思えば移動できる自由と解します(可能的自由説)。これは、逮捕・監禁された者の移動できる状態それ自体を保護しようとするものです。
もう一つの見解は、場所的移動の自由を、実際に移動しようと思ったときに移動できる自由と解します(現実的自由説)。これは、実際に移動しようとする段階になった時点で、初めて場所的移動の自由が侵害されたとする見解です。
例⑥ Aは、部屋で睡眠しているBを閉じ込めた。しかし、Bが起きる前に監禁を解いた。
この場合、通説をとれば、Bを閉じ込めた段階で監禁罪が成立します。他方、もう一方の見解をとれば、Bが寝ている間に監禁は解除されたので、場所的移動の自由は侵害されておらず、監禁罪は成立しないとされます。