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衆議院の解散ってなに?

Last Updated on 2022年3月15日

衆議院の解散という言葉は、一度耳にしたことがあると思います。衆議院が解散されると、参政権を有する私たちは、選挙に行き、新たに衆議院議員を選ぶことになります。ところで、そもそも衆議院の解散とはどのようなもので、何を根拠になされるのでしょうか?そこで、ここでは、衆議院の解散を憲法上の観点から説明します。 

1.衆議院の解散とは 

 衆議院の解散とは、衆議院議員の任期満了前に全議員の議員たる地位を失わせることを言います。解散が行われると、解散の日から40日以内に総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければなりません(憲法54条1項)。そして、衆議院が解散されたときは、参議院は閉会、つまり、お休みとなります(憲法54条2項)。 

2.衆議院の解散の法的根拠 

 現在の衆議院の解散の多くは、内閣により、政治的理由からなされます。しかし、我々が選んだ国会議員をいわばクビにするわけですから、当然ながら憲法や法律の根拠が求められます。 

 この点、内閣は、衆議院で不信任の決議が可決されたとき、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院を解散しない限り、総辞職しなければならない、とする規定が憲法上存在します(憲法69条)。そのため、この場合は、内閣に衆議院の解散権があることは明らかです。 

 問題は、衆議院の解散は69条の場合以外にも認められるか?です。衆議院の解散は69条の場合に限定されるのでしょうか?それとも、それ以外の場合にも衆議院の解散は可能なのでしょうか? 

(1)69条限定説 

これは、解散権は69条の場合に限定されるとする説です(ちなみに、69条による内閣不信任案が可決されて、衆議院が解散されたのは今までに4回あります)。 

 この説に対しては、衆議院の解散があまりにも限定されすぎて、国政の妥当性について国民に問うことができなくなるとの批判があります。 

(2)69条非限定説 

この説は、衆議院の解散権は内閣に属し、69条の場合以外にも解散は可能であるとします。もっとも、その根拠については様々なものがあります。 

通説は、解散権の根拠を内閣の助言と承認に求めます。すなわち、天皇は国政に関する権能を有しない(憲法4条1項)。しかし、国事行為(憲法7条)は本来国政に関するものである。これが許されるのは、実質的決定権を有する内閣の助言と承認により、天皇の国事行為が形式的なものとなるためであり、7条3項に規定する衆議院の解散も、この論理が妥当するとします。そして、7条3項は、解散について何も制限していないことから、内閣は自由に解散権を行使できるとします。これを7条解散と言い、今までの衆議院の解散は69条の場合を除いては、全て7条解散により行われています。 

 他方、衆議院の解散権は内閣に属するとしつつも、内閣の助言と承認を根拠としない見解もあります。これは、天皇の国事行為は元々形式的行為であり、内閣の助言と承認からは解散権の所在を導けないとして前説を批判します。この説は、内閣が解散権を有する根拠を議院内閣制の性質から説明します。すなわち、議院内閣制は内閣に解散権があるのを当然としており、議院内閣制を採用する日本においてもこれが妥当するとします。 

 また、行政の概念に解散権の根拠を求める見解もあります。すなわち、行政とは立法作用と司法作用を除いた国家の作用を指すとする控除説から、解散権は立法作用でも司法作用でもないため、内閣に解散権が帰属するとします。 

【現行の衆議院解散に関する司法審査】 

 衆議院の解散(7条解散)が意見無効であるとして、衆議院議員であったXが起こした訴訟で、最高裁はいわゆる統治行為論を用い、司法審査を否定しました(最高裁昭和35年6月8日大法廷判決)。現代において、衆議院の解散が違憲であると訴えを起こしても、最高裁は、この判例と同様に、司法審査が及ばないとして訴えを棄却することが予想されます。 

3.まとめ 

 以上、衆議院の解散権に関する様々な争いを説明しました。もっとも、7条解散はもはや慣行になっており、また、国民の意思を問うという観点から、解散権を広く認めるべきとの主張もあります。以降の解散も、同様の根拠から行われるものと思われます。 

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