[判例解説] 起訴後の接見指定(捜査):最決昭和55年4月28日

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Point 
1.起訴後の接見指定が許される場合がある 

 

1.事案の概要 

 被告人は、収賄事件で起訴され勾留(起訴後勾留)されました。その後、被告人は別件の収賄罪でも逮捕・勾留(起訴前勾留)されました。検察官は、弁護人の接見の申し出を拒否しました弁護人は準抗告を申し立てました。 

 

(関連条文) 

・刑事訴訟法39条1項 :「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、第31条第2項の許可があった後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。  

刑事訴訟法39条3項 :「検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。 

 

【争点】 

起訴後勾留されている被告人に対して、別件で起訴前勾留されていることを理由に、接見指定をすることが許されるか 

 

 

2.判旨と解説 

 

*接見交通権についての説明はこちら

*接見指定の要件についてはこちら

 身体拘束を受けている者は、弁護人と接見をすることが許されます(刑訴39条1項)。もっとも、検察官は、捜査の必要がある場合、接見指定を行い、その日時等を指定できます(刑訴39条3項本文)。しかし、接見指定が可能なの、「公訴の提起前に限られます。つまり、公訴提起後引き続き被告人勾留されても、接見指定をすることは許されません。

 もっとも、逮捕・勾留は事件単位で行われます。そのため、異なる被疑事実による身体拘束が競合することがあります。どういうことかというと、例えば、殺人の容疑で起訴され勾留(起訴後勾留)されている被疑者、別件の窃盗の容疑で逮捕・勾留(起訴前勾留)されるといった事態が生じのです。

*事件単位の原則についての解説はこちら

 

 

 

 さて、このような場合に、接見指定をすることは許されるのでしょうか。上の例で言うと、窃盗の被疑事実で行われている起訴前勾留だけを見れば、接見指定が可能に見えます。しかし、殺人の被疑事実による起訴後勾留も考慮すると、「公訴の提起前」にあたらず、接見指定は不可能にも思えます。

 

 この点、公訴の提起後に接見指定が許されないのは、被告人の防御の権利を害してはならないためです。また、起訴前勾留の理由となった被疑事実の捜査をする必要性もあります。そうすると、被告人の権利を不当に害する場合でない限り、接見指定を行うことは許されてもいいのではないかといった解釈が現れます。

 

 本件で最高裁は、被告事件についての防御権の不当な制限にわたらない限り、接見指定をすることが許されるとしました。

 

 「~なお、同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防禦権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法三九条三項の接見等の指定権を行使することができるものと解すべきであって、これと同旨の原判断は相当である。  

 

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