Skip to main content

【判例解説】捜索・差押えの範囲-間接証拠等(捜査):最判昭和51年11月18日 

  

Point 
1.恐喝被疑事件における捜索差押えで、令状に記載された、別件の賭博被疑事件の証拠ともなり得る証拠の差押えは許される 

 

1.事案の概要 

 

捜査機関は、恐喝被疑事件につき、裁判所に対し捜索差押許可状の発付を請求しました。裁判所裁判官は、捜索すべき場所を「大阪市南区西櫓町一四番地奥島連合奥島組事務所及び附属建物一切」、差し押えるべき物を「本件に関係ある、一、暴力団を標章する状、バッチ、メモ等、二、拳銃、ハトロン紙包みの現金、三、銃砲刀剣類等」と記載した捜索差押許可状を発付しました。 

そして捜査機関は、右許可状に基づき、前記奥島組事務所において、奥島連合名入りの腕章、ハッピ及び組員名簿等とともにメモ196枚(以下、「本件メモ」という。)を差し押えました。 

 

(関連条文) 

・憲法35条1項 「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」  

・刑事訴訟法218条1項 「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。」 

・219条1項 「前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。」 

 

【争点】  

・本件メモの差押えは適法か 

 

2.判旨と解説 

 

 捜査機関は、恐喝被疑事件について捜査をするため、本件メモを令状の「差し押さえるべき物」に記載し、実際に差し押さえました。しかし、このメモには暴力団組員の常習的な賭博場開帳の模様が記録されており、賭博被疑事件の証拠となるものでした。そこで、恐喝被疑事件について行われた捜索差押えにおいて、賭博被疑事件の証拠となる本件メモを差し押さえることが、適法か否かが問題になります。 

 

 まず、令状に記載された「メモ」に、賭博事件について記載された本件メモが該当するか否か問題になります。最高裁は、「暴力団を標章する状、バッチ、メモ等」は、暴力団の性格、被疑者らと同組の関係等を解明するために必要な証拠として差押物件となっていることを指摘します。そして、本件メモにより被疑者と同組の関係や暴力団の組織内容等を知ることができ、そのため恐喝事件の証拠となるので、本件メモは差押えの目的物にあたるとします。 

 

 「右捜索差押許可状には、前記恐喝被疑事件に関係のある「暴力団を標章する状、バッチ、メモ等」が、差し押えるべき物のひとつとして記載されている。この記載物件は、右恐喝被疑事件が暴力団である奥島連合奥島組に所属し又はこれと親交のある被疑者らによりその事実を背景として行われたというものであることを考慮するときは、奥島組の性格、被疑者らと同組との関係、事件の組織的背景などを解明するために必要な証拠として掲げられたものであることが、十分に認められる。そして、本件メモ写しの原物であるメモには、奥島組の組員らによる常習的な賭博場開張の模様が克明に記録されており、これにより被疑者である朴鐘石と同組との関係を知りうるばかりでなく、奥島組の組織内容と暴力団的性格を知ることができ、右被疑事件の証拠となるものであると認められる。してみれば、右メモは前記許可状記載の差押の目的物にあたると解するのが、相当である。」 

 

また、最高裁は、令状に明示されていない物の差し押さえや、もっぱら別罪の証拠に利用する目的で差押えを行うことは禁止されているとします。しかし本件メモを、専ら別罪である賭博事件の証拠に利用する目的で差し押えたとみるべき証跡は存在しないとして、本件の差し押さえを適法としました。 

 

 「憲法35条1項及びこれを受けた刑訴法218条1項、219条1項は、差押は差し押えるべき物を明示した令状によらなければすることができない旨を定めているが、その趣旨からすると、令状に明示されていない物の差押が禁止されるばかりでなく、捜査機関が専ら別罪の証拠に利用する目的で差押許可状に明示された物を差し押えることも禁止されるものというべきである。そこで、さらに、この点から本件メモの差押の適法性を検討すると、それは、別罪である賭博被疑事件の直接の証拠となるものではあるが、前記のとおり、同時に恐喝被疑事件の証拠となりうるものであり、奥島連合名入りの腕章・ハッピ、組員名簿等とともに差し押えられているから、同被疑事件に関係のある「暴力団を標章する状、バッチ、メモ等」の一部として差し押えられたものと推認することができ、記録を調査しても、捜査機関が専ら別罪である賭博被疑事件の証拠に利用する目的でこれを差し押えたとみるべき証跡は、存在しない。」 

スポンサーリンク
コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。