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【判例解説】不法領得の意思②(各論):最高裁昭和55年10月30日第二小法廷決定 

Last Updated on 2021年1月25日

 

Point 
1.使用後に自動車所有者に返還する意思があっても、窃盗罪が成立しうる。 

 

1.事案の概要 

 

 被告人は、駐車してあった被害者所有の自動車を、およそ5時間後に返すつもりで、無断で乗り回しましたが、窃取からおよそ4時間後に無免許運転で検挙されました。 

 

(関連条文) 

・刑法235条 「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 

 

【争点】 

・被告人に窃盗罪が成立するか  

 

 

2.判旨と解説 

 

 窃盗罪の成立には、不法領得の意思を要するとするのが通説・判例です。不法領得の意思とは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思最高裁昭和26年7月13日第二小法廷判決のことを言います。 

 

*窃盗罪の解説はこちら 

*引用判例についてはこちら 

 

 本件で被告人は自動車を窃取していますが、これを後に返還する意思があります。この場合でも不法領得の意思(権利者排除意思)が成立するか否かが問題となります。上記判例では、船を乗り捨てる意思があった場合不法領得の意思は否定されないとしました。本件で最高裁は、自動車を返還する意思があった場合でも、不法領得の意思は否定されないとして被告人に窃盗罪が成立するとしました。 

 

 なお、原判決及びその是認する第一審判決によれば、被告人は、深夜、広島市内の給油所の駐車場から、他人所有の普通乗用自動車(時価約二五〇万円相当)を、数時間にわたつて完全に自己の支配下に置く意図のもとに、所有者に無断で乗り出し、その後四時間余りの間、同市内を乗り廻していたというのであるから、たとえ、使用後に、これを元の場所に戻しておくつもりであつたとしても、被告人には右自動車に対する不正領得の意思があつたというべきである(最高裁昭和四二年(あ)第二四七八号同四三年九月一七日第三小法廷決定・裁判集一六八号六九一頁参照)。 

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