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【判例解説】不法領得の意思①(各論):最高裁昭和26年7月13日第二小法廷判決   

Last Updated on 2021年1月18日

 

Point 
1.窃盗罪の成立には、不法領得の意思が必要 

2.その物を永久的に保持する意思がなくとも、不法領得の意思が肯定できる 

 

1.事案の概要 

 

 被告人は強盗傷人事件を行い、その後陸地から船で逃走しようと企て、繋留してあった船一艘に乗り込み岸から海上まで漕ぎ出しまし。なお被告人は対岸に着いたらその場にこれを乗り捨てるつもりでした。 

 

(関連条文) 

・刑法235条 「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 

 

【争点】 

・被告人に不法領得の意思は認められるか 

2.判旨と解説 

 

 大審院以来、窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要とされてきました。本件では、最高裁としても、窃盗罪の成立にはこれを要すると判断しました。 

 

*窃盗罪の解説はこちら 

 

 もっとも被告人は、船を一時的に利用した後は乗り捨てるつもりであり、その後これをどうしようといった事は考えていませんでした。しかし、最高裁は、不法領得の意思を肯定するには、窃取した物を永久に保持する意思は要しないとして、被告人不法領得の意思を認め窃盗罪の成立を肯定しました。 

 

そもそも、刑法上窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであつて、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としないのであるから、被告人等が対岸に該船を乗り捨てる意思で前記肥料船に対するAの所持を奪つた以上、一時的にも該船の権利者を排除し終局的に自ら該船に対する完全な支配を取得して所有者と同様の実を挙げる意思即ち右にいわゆる不正領得の意思がなかつたという訳にはゆかない。 

  

 

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