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[解説] 夫婦同氏性の合憲性④(法の下の平等)最高裁平成27年12月16日大法廷判決

Last Updated on 2022年3月15日

Point 

1.夫婦同氏性は憲法13条、14条1項、24条に反しない 

2.「氏の変更を強制されない自由」は、憲法上の権利(憲法13条)として保障されていない 

3.憲法24条1項は婚姻をするか,いつ誰と婚姻をするかについて、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるという趣旨を明らかにしたものである 

4.婚姻及び家族に関する法制度を定めた法律の規定が憲法13条,14条1項に違反しない場合に,更に憲法24条にも反するかが問題となる場合は,当該規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き,国会の立法裁量の範囲を超えるかという観点から判断すべき 

5.選択的夫婦別氏制は憲法上禁止されていない 

 

③はこちら

 

そして、夫婦同氏性につき、以下の点を指摘します。 

①家族は社会の基礎的な集団であるので、これを氏で捉え規律するのは合理性がある 

②夫婦同氏制は、個人がある家族を構成する一員であると公示、識別する機能を有す 

③夫婦間の子が共同親権に属する嫡出子であることを示す点からも、三者が同氏である仕組みは重要な意義を有する 

④同一の氏を用いることで、家族の一員であることを実感でき、これには意義がある 

⑤子は親と同氏であることにより利益を享受しやすい 

⑥夫婦がいずれの性を用いるかは両者の協議に委ねられている 

⑦夫婦同氏性の基、様々な不利益(アイデンティティの喪失や個人の社会的信用の低下等)を避けるためにあえて婚姻を選択しない者が存在する、妻が上記不利益を受ける場合が多いなどの問題がある→しかし、夫婦同氏性は婚姻前の氏を通称名として使用することを許さないとするものではないし、事実、通称名の使用が広まっているため、この不利益が一定程度緩和されている

 

「…婚姻に伴い夫婦が同一の氏を称する夫婦同氏制は,旧民法(昭和22年法律第222号による改正前の明治31年法律第9号)の施行された明治31年に我が国の法制度として採用され,我が国の社会に定着してきたものである。前記のとおり,氏は,家族の呼称としての意義があるところ,現行の民法の下においても,家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ,その呼称を一つに定めることには合理性が認められる。そして,夫婦が同一の氏を称することは,上記の家族という一つの集団を構成する一員であることを,対外的に公示し,識別する機能を有している。特に,婚姻の重要な効果として夫婦間の子が夫婦の共同親権に服する嫡出子となるということがあるところ,嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義があると考えられる。また,家族を構成する個人が,同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できるところである。さらに,夫婦同氏制の下においては,子の立場として,いずれの親とも等しく氏を同じくすることによる利益を享受しやすいといえる。加えて,前記のとおり,本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではなく,夫婦がいずれの氏を称するかは,夫婦となろうとする者の間の協議による自由な選択に委ねられている。これに対して,夫婦同氏制の下においては,婚姻に伴い,夫婦となろうとする者の一方は必ず氏を改めることになるところ,婚姻によって氏を改める者にとって,そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱いたり,婚姻前の氏を使用する中で形成してきた個人の社会的な信用,評価,名誉感情等を維持することが困難になったりするなどの不利益を受ける場合があることは否定できない。そして,氏の選択に関し,夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている現状からすれば,妻となる女性が上記の不利益を受ける場合が多い状況が生じているものと推認できる。さらには,夫婦となろうとする者のいずれかがこれらの不利益を受けることを避けるために,あえて婚姻をしないという選択をする者が存在することもうかがわれる。しかし,夫婦同氏制は,婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく,近時,婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ,上記の不利益は,このような氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得るものである。」 

 
そうすると、本件規定は、合理性を欠くとは認められず、憲法24条反しないとします。
 

 

「以上の点を総合的に考慮すると,本件規定の採用した夫婦同氏制が,夫婦が別の氏を称することを認めないものであるとしても,上記のような状況の下で直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることはできない。したがって,本件規定は,憲法24条に違反するものではない。」 

 
もっとも、上記判断は、選択的夫婦別氏性に合理性がないとするものではないが、この制度を採用するか否かは国会で議論・判断される事項であるとしました。
 

 

「なお,論旨には,夫婦同氏制を規制と捉えた上,これよりも規制の程度の小さい氏に係る制度(例えば,夫婦別氏を希望する者にこれを可能とするいわゆる 選択的夫婦別氏制)を採る余地がある点についての指摘をする部分があるところ,上記…判断は,そのような制度に合理性がないと断ずるものではない。上記のとおり,夫婦同氏制の採用については,嫡出子の仕組みなどの婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく,この点の状況に関する判断を含め,この種の制度の在り方は,国会で論ぜられ,判断されるべき事柄にほかならないというべきである。」 

 

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