酩酊防止法、酔っぱらい防止法、トラ退治法とも呼ばれる同法は、酩酊者の行為が個人や社会に影響を与える害悪を防止するための法律です(1条)。同法は、主に、警察官が酩酊者に対して取ることができる措置や、酩酊者の行為に対する罰則を定めています。
同法は、「めいてい者に対して寛容に過ぎるわが国の社会的習慣を風刺する意味で、いわゆる酔っぱらい天国ということがいわれるようになったのは、戦後のこととはいえ、すでに新しいことではないのであります。しかるに、年末、年始や花見どきは言うに及ばず、盛り場、街頭、汽車、電車などの公共の場所や乗りものにおいて、目にあまるめいてい者を日本ほど多く見かける国はないということを絶えず内外の識者によって指摘され、めいていによる犯罪の件数も年々増加の傾向にあることは、従来の統計の示すところによって明らかであります。他方、また、酒乱に基づく家庭悲劇も一向に跡を断たないのが実情」であることが、立法理由とされています*。
*第38回国会 参議院 地方行政委員会 第15号 昭和36年4月18日 紅露みつ発言https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=103814720X01519610418¤t=5
警察官は、公共の場所又は乗物で粗野又は乱暴な言動をしている場合で、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当の理由があると認められるときは、その者を保護しなければなりません(3条1項)。警察官が、駅や路上にいる酩酊者を保護している場面を見たことがある方は多いと思いますが、これらの行為は同法が要求する措置でもあります。
また、警察官は、酩酊者が住居内で同居の親族等に暴行をしようとするなどして生命・身体・財産に危害を加えようとしている場合で必要があるときは、住居内に立ち入ることも出来ます(6条)。
警察官は、酩酊者を保護した場合でその者がアルコール中毒であるとの疑いを持った場合には、保険所長に通報しなければなりません(7条)。
酩酊者が、公共の場所や乗物で、粗野又は乱暴な言動をした場合には、拘留又は科料に処されます(4条1項)。
もっとも、同法違反で起訴された事例はほとんどありません。そのため、同法は、もっぱら、警察官に酩酊者等を保護すること及び保護後の手続を定めた法律として機能しています。