公判手続とは、公判期日における審判手続をいいます。公判期日は、公開の法廷で開かれます。被疑者を起訴すると、第1回公判期日が指定されます。被疑者は、その期日に、裁判所に出頭して裁判を受けることになります。事件によっては、公判期日は1回で終わらず、第2回公判期日、第3回公判期日と続くこともあります。
公判期日は、冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続、判決で構成されます。
*公判請求と略式命令についての解説はこちら
1.冒頭手続
①人定質問
まず裁判官が、被告人に氏名、住所、職業等を訪ねます。人違いを防ぐためです。
・刑事訴訟規則196条 「裁判長は、検察官の起訴状の朗読に先だち、被告人に対し、その人違でないことを確めるに足りる事項を問わなければならない。」
②起訴状朗読
起訴状には被告人が犯したとされる事件(被疑事実)が記載されています。検察官がこれを読み上げることで、事件の概要が明らかになります。
③黙秘権の告知と罪状認否
被告人には憲法で黙秘権が保障されています。そこで裁判官が被告人にこの権利があることを知らせます。また、被告人が個々の質問に対し陳述することができる旨や陳述した場合には不利益又は利益な証拠になる旨も告げなければなりません。
そして裁判官は、起訴状に書かれた事実を認めるかどうか被告人に確認します。
・憲法38条1項 「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」
・刑事訴訟法291条4項 「裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。」
・刑事訴訟規則197条1項 「裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し又個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨の外、陳述をすることもできる旨及び陳述をすれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなるべき旨を告げなければならない。」
2.証拠調べ手続
①冒頭陳述
起訴状に記載された被疑事実は短いもので、これだけでは事件の概要がわかりません。そこで検察官は、証拠調べ手続の初めの冒頭陳述で、犯行に至る経緯、犯行状況等の詳しい事実を明らかにします。
②証拠調べ請求
検察官は、被疑者が犯した犯罪について立証しなければなりません。そのためには証拠が必要です。そこで裁判官に証拠調べ請求をします。その際には、証拠と証明すべき事実との関係を明示して行わなければなりません。また、弁護人も証拠調べ請求をすることができます。
・刑事訴訟法298条1項 「検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。」
・刑事訴訟規則189条1項 「証拠調の請求は、証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して、これをしなければならない。」
③証拠調べ請求に対する意見と証拠決定
証拠調べ請求に対し、当事者は意見を述べることができます。そして、裁判官が証拠調べをするか否かを決定します。
・刑事訴訟規則190条1項 「証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。」
・2項 「前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を、職権による場合には、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。」
④証拠調べ
証拠調べ決定をした証拠について、証拠調べを行います。
3.弁論手続
証拠調べが終わると、検察官は意見陳述をしなければなりません。これは論告・求刑と呼ばれます。
その後、被告人、弁護人も意見陳述をすることができます。
・刑事訴訟法293条1項 「証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。」
・2項 「被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。」
4.判決手続
以上の手続きが終わった後、公判廷において判決が出されます。
・刑事訴訟法342条 「判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。」