【判例解説】再逮捕・再勾留の許容性(捜査):東京地決昭和47年4月4日 

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Point 
1.再逮捕・再勾留が認められるとされた。 

 

1.事案の概要 

被疑者は、昭和47年1月9日から5件の爆発物取締罰則違反の被疑事実で勾留され、1月28日に釈放されました。その後、昭和47年4月3日に、その5件のうちの1件を被疑事実とする勾留請求がされました。勾留請求を受けた裁判官は、勾留請求を却下しました。 

 

*爆発物取締罰則についての解説はこちら  

(関連条文)  

・刑事訴訟法199条3項 「検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。」 

・刑事訴訟規則142条1項 「逮捕状の請求書には、次に掲げる事項その他逮捕状に記載することを要する事項及び逮捕状発付の要件たる事項を記載しなければならない。」  

・8号 「同一の犯罪事実又は現に捜査中である他の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨及びその犯罪事実」  

【争点】  

・再逮捕・再勾留は認められるか 

 

2.判旨と解説 

 以前に被疑者は、爆発物取締罰則の被疑事実で逮捕・勾留されています。そして、釈放後に同一の被疑事実で再び逮捕され勾留請求されています。実体法上一罪については一逮捕一勾留が原則です。 

 

*一罪一逮捕一勾留の原則についての解説はこちら 

*一罪一逮捕一勾留の原則について判示した裁判例はこちら 

 

 そこで、被疑者を同一の犯罪で再逮捕・再勾留ができるかが問題になります。 

 

*再逮捕・再勾留についての解説はこちら 

 

 刑訴法203条以下は、被疑者の身体拘束時間について定めています(逮捕から勾留請求までは最大で3日間。勾留は原則10日間最大で25日間)。事情が変わったからといって、被疑者の再逮捕を許してしまっては、この期間を定めた趣旨を没却してしまいます。 

 

 他方で、刑事訴訟法199条3項や刑訴規則142条1項は、再逮捕が許される場合があることを前提にしています。また、再度の勾留を禁止している規定もありませんし、勾留と逮捕は密接不可分な関係にあります。 

 

 そうすると、法は、例外的に再逮捕・再勾留を許容していると解されます。 

 

そして、どのような場合に許されるかが問題になります。地裁は、諸般の事情を考慮し、社会通念上捜査機関に強制捜査を断念させることが首肯し難く、また、身柄拘束の不当なむしかえしでないと認められる場合に限り、再勾留が認められるとしました。 

 

「思うに同一被疑事件について先に逮捕勾留され、その勾留期間満了により釈放された被疑者を単なる事情変更を理由として再び逮捕・勾留することは、刑訴法が二〇三条以下において、逮捕勾留の期間について厳重な制約を設けた趣旨を無視することになり被疑者の人権保障の見地から許されないものといわざるをえない。しかしながら同法一九九条三項は再度の逮捕が許される場合のあることを前提にしていることが明らかであり,現行法上再度の勾留を禁止した規定はなく、また、逮捕と勾留は相互に密接不可分の関係にあることに鑑みると、法は例外的に同一被疑事実につき再度の勾留をすることも許しているものと解するのが相当である。そしていかなる場合に再勾留が許されるかについては、前記の原則との関係上、先行の勾留期間の長短、その期間中の捜査経過、身柄釈放後の事情変更の内容、事案の軽重、検察官の意図その他の諸般の事情を考慮し、社会通念上捜査機関に強制捜査を断念させることが首肯し難く、また、身柄拘束の不当なむしかえしでないと認められる場合に限るとすべきであると思われる。このことは、先に勾留につき、期間延長のうえ二〇日間の勾留がなされている本件のような場合についても、その例外的場合をより一層限定的に解すべきではあるが、同様にあてはまるものと解され、また、かように慎重に判断した結果再度の勾留を許すべき事案だということになれば、その勾留期間は当初の勾留の場合と同様に解すべきであり、先の身柄拘束期間は後の勾留期間の延長、勾留の取消などの判断において重視されるにとどまるものとするのが相当だと思われる。」 

 

 そして、本件は爆発物取締罰則違反という重大事件であること、前回の勾留が5件の併合罪関係にある同種犯罪についてされたものであること等を考慮すると、本件では上記要件を充足するとしました。そして、勾留請求を却下した原裁判を取り消して、再勾留を認めました。 

 

「そこで、本件についてみると、関係記録により、本件事案の重大さ、その捜査経緯、再勾留の必要性等は別紙(一)記載の申立理由中に記載されているとおりであると認められ、その他、前回の勾留が期間延長のうえその満了までなされている点についても、前回の勾留は本件被疑事実のみについてなされたのではなく、本件を含む相互に併合罪関係にある五件の同種事実(別紙(二))についてなされたものであることなどの点も考慮すると、本件の如き重大事犯につき捜査機関に充分な捜査を尽させずにこれを放置することは社会通念上到底首肯できず、本件について被疑者を再び勾留することが身柄拘束の不当なむしかえしにはならないというほかなく、前記の極めて例外的な場合に該当すると認めるのが相当である。」 

 

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